「おむすび」が批判される理由は「明る過ぎるヒロインアレルギー」 まるで90年代少女マンガのような橋本環奈に違和感
女優の橋本環奈がヒロインを務める朝ドラ「おむすび」に対して、「これじゃない」と訴える視聴者が続出。ライターの冨士海ネコ氏が分析する、「明るいヒロイン」へのアレルギー現象と、キャラ設定に「ギャル」が選ばれた理由とは。 【写真11枚】地味過ぎる「おむすび」に比べて… “豪華過ぎて二度見するレベル”の「あんぱん」出演者たち ***
朝ドラが批判されるのは通常運転。橋本環奈さんがヒロインの「おむすび」も例外ではないようだ。ギャルというモチーフの使い方や展開の遅さ、果てはB‘zの主題歌まで、「これじゃない」と訴える視聴者が続出している、とネットニュースではもちきりである。 わたしは熱心な朝ドラウォッチャーではないが、第1話を見たときになんだか少女マンガの実写化みたいだな、とは思った。そもそも橋本さんは「キングダム」や「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」などをはじめ、実写化ヒロインの実績が多い女優。2次元から飛び出たような美少女ぶりとコメディエンヌとしての才能は、同年代の女優の中でも頭一つ抜けている。 そんな橋本さんが、食パンではなくおむすびをくわえながら登校し、家訓により人助けのために海に飛び込んだりすると、マンガっぽさが一気に高まってしまう。気のいい幼なじみに憧れの先輩、県外から来た野球少年など、ヒロインを取り巻く男性陣も少女マンガの王道だ。にぎやかしのように現れるギャル集団もどこか記号っぽい。そうした演出の数々は、人形のような橋本さんのルックスと相まって、血肉の通わないマンガヒロインというイメージを一層強めてしまっているように感じた。 朝ドラにとって、応援したくなるヒロインかどうか、というのは一番大きいポイントだ。賛否両論あれど、前クールの「虎に翼」は多くの女性の支持を集めた。健気さと明るさで周囲に助けられながら生きる、という旧来の朝ドラヒロイン像とは少し違う、むしろ世間が求める理想の女性像に中指を突き立てるようなヒロインたちだったが、そこが共感と熱狂的なファンも生んだともいえるだろう。 一方で「おむすび」のヒロイン・結には、「とらつば」の寅子たちにあった汗臭さや我の強さはない。震災をきっかけに栄養士を目指すというあらすじは提示されているが、現時点の結は夢を持つことに懐疑的な現代っ子という描かれ方をしている。キャラにも話にも今ひとつ「軸」が見えない現段階では、エールも文句も言いにくい。嫌いだったはずのギャル仲間とパラパラの練習に励み、系統の違う男子たちとそれぞれに仲を深めていく様子は、やっぱり少女マンガというか、美少女JKのモテモテ青春物語、という以上の印象が残らないのだ。