「おむすび」が批判される理由は「明る過ぎるヒロインアレルギー」 まるで90年代少女マンガのような橋本環奈に違和感
ギャルブームなのに……ギャル好きもギャル嫌いもそっぽを向いたギャル解像度の低さ
もう一つ批判を集めているのが、ギャルの存在である。朝からギャルなんて見たくない、という人も多いようだ。余談だが、ギャルだったのに食の大切さに目覚め、というストーリーを聞いて、私は押切もえさんの立志伝か? と思った。ギャルモデルを経てアスリートフードマイスターの資格を取った平成ギャルの星・押切さん。彼女を輩出した「egg」の読者モデルを務めた方がギャル文化監修に入っているようだが、かつてのギャルたちからは「なんか違う」という声も。ドラマ公開前にお披露目された橋本さんのギャルコスプレは、都会から一周遅れという設定とはいえ、大ブーイングを浴びていた。 ただ今作では、ギャルのリアリティーより「ギャルマインド」を押し出すことに力点が置かれているのだろう。明るく物おじせず、ちょっとおバカだが憎めない。自由奔放に見えるが、実は上下関係に厳しい体育会系。そういう、ギャルマインドのいいとこ取りをした理想のギャルキャラは、昔から芸能界の人気者だ。みちょぱさんやゆうちゃみさんのバラエティー評価は高く、お笑い界でもぱーてぃーちゃんの信子さんや、エルフの荒川さんが引っ張りだこに。今作でルーリーを演じるみりちゃむさんは、実は礼儀正しいとバラエティーの共演者が明かしている。 「おむすび」でも、「こうあってほしい」という、大人の理想を反映したギャル設定が目立つ。放任気味の親の下、栄養失調になったり、浜崎あゆみの歌詞に孤独感を重ね、反動のように派手に着飾りオラつく少女たち。実は繊細で頑張り屋で、将来の夢を語り合う。でも当時のギャルって、将来より「この一瞬」をいかに楽しくするかになりふり構わなかったからこそ、ファンもアンチも生んだのではなかったか。 アイライナーではなく白マジックで目の周りを囲む横着さ、盛り髪をキープするため風呂に入らない不潔さ。アガる見た目になったら、所かまわず群れてパラパラを踊る野放図さ。「実はいい子だって分かってるよ」というしたり顔をはねのける、手に負えない野生児のような姿こそが新しく、熱狂を生んだはず。 でも「おむすび」ではステレオタイプな不良少女のような描写になってしまった結果、ギャル好きからもギャル嫌いからもそっぽを向かれているのではないだろうか。ただその一方で、ギャルというモチーフを選んだのは、朝ドラとしてのバランスを取る苦肉の策だったのかなとも思うのである。