【ステイヤーズS回顧】3度目の正直で重賞初制覇 アイアンバローズを勝利に導いた石橋脩騎手の好判断
アイアンバローズだけが理想的な流れ
ジャスティンパレスが菊花賞へ挑戦する際、兄はステイヤーズS2着アイアンバローズなので、血統的に距離は問題ないと紹介された。事実、菊花賞3着、阪神大賞典、天皇賞(春)連勝と、弟は今年、一気に飛躍し天皇賞(秋)では世界ナンバー1イクイノックスの2着に入った。 【チャンピオンズカップ2023 注目馬】海外を転戦し着実にレベルアップ、先行力武器にGⅠ制覇だ! SPAIA編集部の注目馬を紹介(SPAIA) すっかり弟に先を越されてしまったアイアンバローズだが、今年、ついに自分の庭で重賞タイトルをつかみとった。ステイヤーズSは過去2、4着。このレースの走り方をもっとも知る馬が勝ったといえる。昨年は京都大賞典6着、今年は同レース11着と少しパフォーマンスを落としたかと思われたが、関係なかった。自分の得意ゾーンに来れば、巻き返す。競走馬の能力は一定ではなく、様々な条件で大きく変化する。いかに力を出せる得意ゾーンに出走させるか。まさにそれを教えられる競馬だった。 今年は馬体重10キロ減の504キロ。これは昨年と同じで2年前とも4キロしか変わらない。陣営の揺るぎない仕上げがこの数字に見える。8番人気は人気がなさすぎた。あらゆるファクターから陣営の意図をくみとることは大切だ。2年前のステイヤーズSと今年を1200mごとのラップで比べると、 21年1:18.1-1:18.4-1:11.1 3:47.6 23年1:15.5-1:17.5-1:12.4 3:45.4 序盤はアフリカンゴールドにハナを譲り、2番手に控えるも、少し行きたがる素振りを見せたため、石橋脩騎手がアフリカンゴールドをとらえ、ハナに立つ形に切りかえた。ここが勝因だろう。あまり引っ張りすぎて、スローから終いだけの競馬にしてしまうと、瞬発力で見劣るのは2年前に自身が経験していた。経験と思い切りのよさが、理想的なペースに結びついた。 先頭に立ってからは後ろを引き離しつつ、十分に息を整えた。スパート前の1800~2400mの区間は13.1-13.1-13.1。後ろも動きにくい区間を利用したペース配分は見事だった。前半はある程度隊列を離すために13秒を切るラップを刻み、中盤で一気にペースを落とし、最後はじわじわと加速する。アイアンバローズだけが理想的な流れに乗れたといっていい。