【ステイヤーズS回顧】3度目の正直で重賞初制覇 アイアンバローズを勝利に導いた石橋脩騎手の好判断
まるでビートブラックの天皇賞(春)
最後の1200m1:12.4は、12.3-12.3-12.2-11.9-11.7-12.0。2年前が12.2-11.9-11.7-11.6-11.3-12.4なので、今年は仕掛けを待ち、余裕をもって最後の直線を迎えられた。後ろが追いかけてこなかったのも大きい。8番人気で各騎手の視線から外れていたか。追撃したかった好位勢セファーラジエルに長距離適性がなく、その後ろにいた2、3着馬も仕掛けが遅れてしまったようだ。もっとも体力がある一頭に展開利があっては、ほかはなす術なし。アイアンバローズと石橋脩騎手に一本とられた形になった。 途中から動き、ハナに行き、大きなリードを作って逃げ込む。石橋脩騎手といえば、2012年天皇賞(春)のビートブラックを思い出す。14番人気での大駆けだったが、このとき1番人気だったのはアイアンバローズの父オルフェーヴル。なにかドラマを感じざるを得ない。ビートブラックは先日、京都競馬場の誘導馬を引退したばかり。因果は色々巡る。 2着テーオーロイヤルは上がり最速33.9の末脚を繰り出すも及ばなかった。アイアンバローズの幻惑戦法にやられた印象だ。それでも前走を約1年の骨折休養明けで使い、得意の長距離で変わり身をみせた。復調が感じられる内容で、今後も長距離戦ではアテになる。一方で、ゆったり運べる条件がベストで、2000m前後や時計が出る馬場だと差し損ねる可能性は高く、条件は見極めて勝負をかけよう。 3着にはマイネルウィルトスが入った。3000m超は初出走だったことを考えれば、今後の選択肢は広がった。7歳で重賞2、3着と充実期にある。加えて操縦性や折り合い面の不安のなさで距離はこなせるが、最後の最後はちょっとしんどい。本音は2500m前後がよさそうだ。それでも長距離で連下級にはおさえよう。舞台を選ばないタイプで大崩れが少ない。 1番人気キングズレインは5着。2、3着馬と比べると、勝負所で動けなかった。距離の課題もあったかもしれないが、コーナーで加速しないといけない中山は本質的に合わないのではないか。さすがに小回りの重賞だと機動力で差がついてしまう。距離的にも前半から強気に行けなかった。不安のない条件で見直そう。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
勝木淳