左手が不自由な女性 弓道に挑む 仲間に支えられ昇段審査で快挙 鹿児島・霧島市
鹿児島テレビ
鹿児島県霧島市の弓道場で、左手に障害がある女性が周囲に支えられながら日々、鍛錬に励んでいます。 11月には昇段試験に臨み、全国的にも珍しいという快挙を成し遂げました。 霧島市の弓道場で、りりしく弓を引く藏屋瑞代さん。 宮崎県都城市の中学校に数学教師として勤めるかたわら、2023年4月に友人の紹介でこの道場で弓道をはじめました。 「当たった?!」 「何で(練習で)1本目を当てるの?」 「ここでもう全て終わったので(笑)」 矢を見事的にあてた藏屋さん。 左手をよく見ると特殊な装具を着けています。 藏屋さんは、幼少期に事故で左の手の平から先を失いました。 左手は、弓を持ち、矢を飛ばす方向を定める役割を果たします。 弓道に挑戦したいという藏屋さんの思いに答えたのが、この場所で指導を行う松原博文さんたちでした。 準備の様子を見せてもらうと、藏屋さんの左腕には弓の引っ張りに耐え、なおかつ、飛ばす方向を調整できるように幾重にも装具が固定されていきます。 藏屋瑞代さん 「圧力がグーっと」 松原博文さん 「弓を押していくとここが負けてしまう。負けちゃうと矢がとんでもない所に行くので、負けないために固定している」 装具は全て松原さんたちの手作り。 10カ月近く試行錯誤し、今の形にたどり着いたそうです。 松原さん 「弓を引いてみたい、引きたいという気持ちが前面に出ていたので、何とか引ける形をつくってあげたいと思っただけ」 1日の射会では、藏屋さんは中学生から社会人までのメンバーに混じって、次々と矢を放ちました。 藏屋さん 「今日の成績は…撃沈でーす。10射中ゼロです。はい、練習で1本当たりました」 「なかなか当たらないから当たった時が楽しい」 今ではすっかり弓道に夢中の藏屋さん。 弓道と仲間との出会いが心に変化をもたらしました。 藏屋さん 「初めて初対面の人に自分の左手を握られて、しかも優しく弓に手を固定する作業をしてもらったので、左手が主役になるというか、私の中で手がないことを許されたというか」 そして11月、藏屋さんが挑んだのが昇段審査。 審査されるのは、矢を射るための一連の所作です。 手作りの装具とともに、見事、初段に合格しました。 弓を持つ左手が不自由な人の昇段審査合格は、全国的にも珍しいということです。 藏屋さん 「諦めなければ人がサポートしてくれて、夢を実現できるということをたくさんの人に知ってもらいたい」 藏屋さんは次の段の合格を目指し、これからも鍛錬に励みます。
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