デートアプリにも依存性? 米国で訴訟も、「いいね」やスワイプで脳に起きることとは
スワイプを繰り返す孤独なゾンビ
コドゥート氏によれば、このような行動は、社会不安や孤独感にさいなまれている人々に最も顕著に見られる。この2つの感情の相互作用がデートアプリの強迫的な使用につながることは、コドゥート氏の研究で明らかになっている。 アブジャウデ氏も、うつ状態や不安に対処するメカニズムとして、デートアプリに何時間も没頭する人々に出会ったことがある。こうした行動は、結果的にユーザーの満足感を大幅に損なうことにもなる。それが依存症の基準を満たさないとしても、アブジャウデ氏は「病的な行動のしるしであることは確かです」と言う。 しかしながら、アプリがユーザーを延々とスワイプを繰り返す孤独なゾンビに変えているという見方は、現実的というよりも道徳的な恐怖感に起因しているのかもしれない。 ローゼンフェルド氏によれば、米国では毎年1500万件の新たな恋愛関係や性的関係が生まれている。ユーザーの誰もが希望する期限内に完璧なマッチングに至るわけではないが、だからといってデートアプリがまったく役に立っていないわけではない。 「マッチ・グループが人々を食い物にしているという訴えには、賛成できません」とローゼンフェルド氏は言う。「実際には、かなり効率的なマッチングを行っていると思います」 「スワイプすれば無限に選択肢があるので、自分の希望にぴったり合った相手を見つけようとすると大変です。それが困った点ではありますが」と、ローゼンフェルド氏は言い添える。 ユーザー自身がスワイプする動機を明確に意識する一方で、デートアプリもアルゴリズムの透明性を高め、「一時的な満足感よりも現実の出会いを重視するインターフェイスを確立することが望ましい」と専門家たちは指摘している。 「たとえば、『あなたは、この5分間で50回スワイプしました。少し休憩しませんか』と知らせてくれるデートアプリはどうでしょう」とチェン氏は言う。「このような機能があれば、ユーザーが自分の行動を振り返り、アプリに費やす時間をもっと意識して管理できるようになるはずです」
文=Leah Worthington/訳=稲永浩子