デートアプリにも依存性? 米国で訴訟も、「いいね」やスワイプで脳に起きることとは
「人生で最高の景品を売っている」、研究者が問題視する不透明なマッチングのアルゴリズム
現代のロマンスでは、デートアプリの「右スワイプ」(「いいね」などの肯定的動作)機能が、魅力の評価や恋愛関係を求める端的な表現になっている。だが、こうしたアプリは、現在、やり玉に挙げられている。 「病気を生む顔」になる食べ物とは 画像5点 2024年のバレンタインデーに、人気のデートアプリを相手取って6人が訴訟を起こした。これらのアプリの「依存性のあるゲームもどき」の特性が「ユーザーを果てしない課金のループに陥らせている」として、告発したのだ。 今回の裁判の被告となった米マッチ・グループは、人気が高い複数のマッチングアプリを運営しており、この訴えを「とんでもない話だ。何のメリットもない」として、批判を全面的に否定している。 だが、この報道の影響で「デートアプリには本当に依存性があるのか」という進行中の議論にも注目が集まった。ユーザーの不健全な行動は、アプリの責任なのか、それとも進化するデジタル社会で健全なテクノロジーの利用方法を確立させる際の難題なのだろうか。
人生で最高の景品
一度スワイプするだけで完璧な出会いが生まれる可能性には、抗しがたい魅力がある。 「恋愛において、特に脳は依存に陥りやすいのです」。米インディアナ大学キンゼイ研究所上級研究員で生物人類学者のヘレン・フィッシャー氏はこう指摘し、デートアプリは「人生で最高の景品を売っている」とする。 米スタンフォード大学精神医学臨床教授のエリアス・アブジャウデ氏によると、デートアプリでは「いいね」やマッチングを受け取ったユーザーは「高揚感」に浸ることができる。その具体的なメカニズムは明らかではないが、アブジャウデ氏はドーパミンのような報酬系回路が関与しているのではないかと考えている。 「ドーパミンは非常に多くの依存プロセスに関わっていることが知られており、スマートフォン依存にも関与していることを示唆するデータもあります」とアブジャウデ氏は話す。 デートアプリの仕組みについて、ほとんど明らかにされていないことも問題になっている。各社に独自のアルゴリズムがあり、マッチングは本質的にブラックボックスになっているだけでなく、ユーザーへの影響に関する調査も不十分だ。「こうした点に関する調査が著しく不足しています」とアブジャウデ氏は指摘する。 米ミシガン大学の心理学助教であるエイミー・ゴードン氏も、アブジャウデ氏と同意見で、相性の予測は人間関係の研究者の間で「周知の大きな謎」だと話す。「特定の人のマッチングがなぜ成立するのか、私たちにはわからないのです」 どのように相性を見極めているか、マッチ・グループはコメントを拒否している。だが、ビジネス誌「フォーチュン」との最近のインタビューで、ヒンジ(マッチグループのデートアプリのひとつ)のCEO(最高経営責任者)であるジャスティン・マクロード氏は「『魅力度スコア』の使用を否定し、各ユーザーの関心や『like(いいね)』『dislike(だめ)』のパターンに基づいた『好みプロファイル』を作成している」と語った。 そしてヒンジのウェブサイトでは、「最も相性が良いペアを選ぶために、理想的なマッチングを効率的に見つけ出すゲール=シャプレー・アルゴリズムを使用している」と述べている。