保育所おやつで重い障害、高裁で「逆転勝訴」…なぜ市の「責任」は認められた? <判決文から>
千葉県四街道市立保育所で、当時3歳だった男児がホットドッグをのどに詰まらせて重い障害が残ったとして、男児と家族が慰謝料を求めて訴えていた裁判で、東京高裁は9月、四街道市に約1億800万円の支払いを命じた。 一審判決を取り消した逆転勝訴となったこの裁判。判決では市側の責任をどのように判断したのだろうか。
● ホットドッグを誤嚥し、一時心肺停止
この事故は2017年2月、保育所でおやつに出されたホットドッグを誤嚥し、一時心肺停止になったというもの。男児は一命はとりとめたものの、寝たきりになるなど重い後遺症が残った。 当時、保育所はどのような状況だったのだろうか。判決文ではまず、次のように事実を認定している。 ・男児は運動や言語に発達の遅れがあったことから、1歳児クラスで保育されていた。健康に問題はなかった。 ・男児の噛む力が弱かったため、保育所側の保育経過記録には「パン、果物などそのままでも手で握り、口に入れることができるようになる。小さく刻むと、喉に詰まることがある」などと記載。また、両親も保育所との面談で、硬いものが食べられないなどと伝えていた。 ・男児の担任保育士であったAさんは「パンが好きでどんどん口に入れてしまう」、同じくBさんも「パンを小さく刻んでしまうと、次々に口に運んでしまい、急いで食べて咳き込むことがあった」などと認識していた。
● 隣で別の子どもが泣いた時に発生
判決では、さらに事故当日の経過を次のように認めている。 ・事故当日、おやつとしてホットドッグと牛乳が提供された。ホットドッグは、キャベツの千切りを皮付きの粗挽きウインナーソーセージを炒めて味付けしたものをパンに挟んだものだった。ホットドッグは半分に切られていたが、ウインナーは長さ約9センチで、縦半分にきられておらず、表面に切れ目も入っていなかった。 ・男児はホットドッグを食べたことはなかった。 ・ホットドッグがおやつとして出された当時、男児を含む10人の園児に対し、AさんやBさんを含む保育士3人と実習生1人が配置されていたが、ホットドッグが出された直後、Bさんが現場を離れ、保育士2人と実習生1人になった。 ・Bさんの机に座っていた園児1人が食事前から泣いていたため、Aさんの隣に移動させた。男児は長方形の机の長辺を挟み、Aさんと向かい合っていた。 ・Aさんは、泣いている園児の背中をさすりながら手を伸ばし、男児にホットドッグを食べさせていた。ホットドッグは食べやすい大きさにするため、手でちぎり、男児はこれをそのまま口に入れていた。Aさんは男児以外の園児2人にも同じようにホットドッグをちぎって与えていた。 ・Aさんがホットドッグの4口目を男児に手渡した後、隣で泣いている園児に顔を向けて食べるように声をかけていたところ、突然、男児が椅子から立ち上がり、息を荒げて苦しそうにした。 ・保育所は緊急通報をおこない、男児の背中を叩いた。保育所側は、救急隊員に「約2センチのソーセージを吐き出したが、食べていたソーセージはもっと長いことからまだ詰まっている可能性がある」と訴えた。 ・救急隊員は、ただちにドクターヘリを要請し、救急車に収容した。再度確認したところ呼吸停止状態にあり、その後、心肺停止状態になった。救急隊員は心配蘇生をおこない、病院に移送されて治療を受けたが、低酸素性能症と診断され、現在も寝たきりの状態で療養している。