元キャバ嬢のベテラン介護士が見た、老いにおける男女の違い――男は“性欲”、女は“推し”!?【村上知美さん】
老いによって減るものを、何か少しでも補えたら
――生きがい・やりがいは大切ですよね。 村上:以前勤めていた施設にイケメンの職員がいたのですが、利用者のおばあちゃんが「今日〇〇くん来る?」って私に聞いてくるんです。「今日は休みだよ。私じゃダメ?」と言うと、「いいよ」みたいな感じのやり取りをするんですけど(笑)。 そのおばあちゃんに、「〇〇くん今日夜勤だよ」って教えてあげると、「ラッキー! (むくまないように)今日はあんまり水分取らないで寝るわ」とか言うから、「やめてやめて、〇〇くん困らせちゃうから」とかふざけ合ったりして。彼はすごく好青年だったので、「今日よろしくお願いします」って必ず挨拶に行くし、おばあちゃんも彼の夜勤の日をすごく楽しみにしていました。利用者さんを毎日外食には連れていけないし、外出レクリエーションに毎日はできない。でも、日常の中で少しでも楽しみがあることが大切だと思うんです。 美空ひばりが好きなおばあちゃんと、J-POPが好きなおばあちゃんがいたんです。だから、奇数の日と偶数の日で流す曲を分けたんですね。それで、美空ひばりの曲の日におばあちゃんに「今日は美空ひばりだよ」と伝えると、「やったぁ!!」ってすごく喜んでくれる。ささやかだけれど、そういうことでもいいのかなと思って。老いによって減るものは多いけれど、何か少しでも補えたらいいなとは思っていました。
女性の方が頑固? 男性の方が意外とお願いを聞いてくれる
――本の中でも、老いについて「男女の違い」を書かれていたところがとても印象的でした。 男性と違って女性は、自分なりの楽しみを見つけるのが上手で、コミュニケーション能力も高い方が多くいます。(中略) それに比べて男性は、おしゃべりが苦手で趣味もない、という方がかなり多くいらっしゃいます。ショートステイでも、日がな一日、テレビの前に座って、黙って野球、相撲、競馬などを観ているだけ、という方が珍しくありませんでした。自分でできるのに「できない」と言って、命令口調で女性介護士に身支度などをさせる方もいれば、女性介護士の体に触ってくる方、排泄介助をするたびに、卑猥なことを言ってくる方もいました。男性はいくつになっても、自分が男であることを忘れないようです。 女性は、歳を重ねると女であることを忘れてしまうのか、男性に興味を示す方は少なく、卑猥な発言などもほとんどありません。 村上:やっぱり女性は強いですね。男性はコミュニケーションが苦手な人が多いんですけど、こちらから話しかけると「うるせえな」とか言いながらも、ちょっとにやけて嬉しそうにしてくれることが多いですね。 これは私の印象ですが、男性は、ぶっきらぼうでも根っこは優しいなと感じることが多かったです。例えば、「お風呂に入りたくない!」と言うおじいちゃんとおばあちゃんがいたとして、おばあちゃんは頑として譲らない場合が多いです。「本当に困るから入って、お願い!」みたいに言うと、「仕方ねえなあ、わかったよ」と折れてくれるのは、男性の方が多いかもしれないですね。 あと、コミュニケーションが得意でないのは仕方ないにしても、少し笑うぐらいはしてもいいんじゃないかな、と思うのは男性が多いですね。「おはよう」と挨拶をしても、「おはよう(真顔)」みたいな。だから、「笑うまで離れないよ~!」と声をかけて、自然と笑いが出るような接し方をしていました。