【袴田事件】「妄想の世界から抜け出せていないようだ」「夜中に1時間も風呂に入る」事件発生から50年目、姉が明かした巌さんの近況
「裁判のことは判決後に初めて話す」
そして再審の判決は、いよいよ9月26日である。 「判決が出たら巖にしっかり説明したいと思っております。今まで全然説明していません。『留守番、頼むね』と言うと『ああわかった』。裁判だろうなとは薄々感じていると思うのですがね。2014年の3月27日に釈放された時に、もう勝ったと思っております。でも弁護士さんの先生方は、大変でございます。いちいち(検察に)反論したり、書類を作ったり。9月26日には大いに期待して待っております。皆様、本当に長い間、お世話になりました。それこそ皆様の後押しがあってこそでございます。ありがとうございました」 大拍手だった。ひで子さんが15分近くも話すのは珍しい。 事件が起きた日は、橋本専務一家の命日でもある。集会後は「市民の会」の山崎事務局長の案内で、同会の石川善朗さん(82)と欠かさす再審傍聴に駆け付けていた中川真緒さん(23)とともに清水区内の墓地を訪れた。 中川さんはこの日、午前中も供花に訪れていた。このあたりは橋本姓が多く、墓地には「橋本家の墓」が多くある。橋本専務一家の墓石には、巖さんが釈放される直前に亡くなった長女・昌子さんの名も新たに刻まれていた。 粟野仁雄(あわの・まさお) ジャーナリスト。1956年、兵庫県生まれ。大阪大学文学部を卒業。2001年まで共同通信記者。著書に『サハリンに残されて』(三一書房)、『警察の犯罪――鹿児島県警・志布志事件』(ワック)、『検察に、殺される』(ベスト新書)、『ルポ 原発難民』(潮出版社)、『アスベスト禍』(集英社新書)など。
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