サッカーJ2・FC岐阜 市民無料招待「総力戦」企画の裏側とは
岐阜市民の観覧を全員無料に
サッカーJ2・FC岐阜は、28日に岐阜メモリアルセンター長良川競技場(岐阜県岐阜市)で行うリーグ第15節、モンテディオ山形戦(午後4時キックオフ)で、岐阜市民の観覧を全員無料にする。対象になる席は最大8000人分。このような大胆な企画の裏には、チームの厳しい状況を支え続ける、地元の深い愛情があった。 J1名古屋 公式戦に小学生1万人招待 初企画の裏に厳しい現実も
財政難に陥りクラブ消滅の危機もあった
FC岐阜は、岐阜市を中心とする岐阜県全県を、ホームタウンとして活動する。クラブ設立は2001年。それまでは地元企業にジャパンフットボールリーグ(いわゆる旧JFL)加盟のサッカー部があったが、1997年に解散。岐阜を代表するチームがなくなったことを残念に思う県内のサッカー関係者などが協力して、FC岐阜を立ち上げた。2006年に日本フットボールリーグ(JFL)、07年にJ2昇格を決めた。 クラブは順調に上を目指すが、財政難に陥ることもあり、クラブ消滅の危機もあった。そんな中、地元企業や行政、岐阜県にゆかりのある人たちが継続的に支援。13年には金融・不動産会社「Jトラスト」の社長で岐阜県出身の藤澤信義氏から、1億5000万円の寄付を受けたことで好転。現監督のラモス瑠偉氏の招へいにつながった。 岐阜県や岐阜市も支援として、ホームスタジアムの長良川競技場の観客席改修と、クラブハウス「岐阜市スポーツ交流センター」を整備。このことで15年、J1昇格のために必要なJ1クラブライセンスが取得できた。J1に挑戦するクラブを応援しようと、県民から約210万円の寄付も集まった。 さまざまな支援に、選手やコーチらはさまざまな地域貢献活動を展開。幼・保育園や小学校を訪問して行うサッカー教室や、高齢者向け施設を訪ねて、簡単な運動やレクリエーションを施設利用者とともに行っている。
岐阜市ホームタウンデー
今回、岐阜市民無料招待を行う試合は、岐阜市ホームタウンデーとして、地元企業とともに展開する。ホームタウンデーは、ホームゲームで岐阜県内の各市町村とFC岐阜がタッグを組み、試合会場で観光やグルメなど、その地域の魅力をアピールする。 無料招待は今年で4度目。企画を進める同市市民体育課の横井敬太さんは「プロサッカーを間近で見たことがない人も気軽に来てもらいたい。サッカーをみんなで応援してFC岐阜を盛り上げる。それがスポーツ振興につながる」と期待を込める。 地元の支援がクラブに集まる理由として、県内唯一のプロスポーツチームであることを挙げた。さらに、チームや選手の苦労を多くの人が間近で見てきたこともある。「クラブハウスがなかったので、選手は駐車場で着替えをしていたこともあった。そんな姿を見てきたサポーターや地元の関係者は、頑張って欲しいという気持ちを抱いて応援する」と話した。
専用受付に岐阜市民と証明できるもの持参で入場OK
岐阜市民の無料招待入場者の推移は、初回の13年は約3000人。ラモス監督就任で注目を集めた14年は約7500人。15年は約4100人。開催日が土曜日や日曜日など違う影響で入場者数に差はあるが、市が目標とする5000人前後で推移する。 今回は土曜日午後の開催のため、多くの来場者が見込まれる。当日は、専用受付に岐阜市民と証明できるものを持参すれば、入場できる。 過去、無料招待の試合でFC岐阜は勝利していない。J2順位は22クラブ中9位(22日現在)。「J1昇格が夢です」(横井さん)と期待する声に、勝利でこたえられるか、注目が集まる。 (斉藤理/MOTIVA)