全国で100人が活動...山岳看護師「登山で楽しい思い出を」
富山テレビ放送
さて、秋も深まり紅葉を楽しみに身近な里山などへ出かけるという人もいらっしゃるのではないでしょうか。 ただどんな山にもケガや病気などのリスクはつきもの。 そうした場面で活躍し、いま注目されているのが「山岳看護師」です。 全国的にもまだ少ない山岳看護士の登山に同行しました。 先月末。 標高1425メートル、富山市の大品山。 無線でやりとりをしながら山道を行く女性がいました。 *中田裕子さん 「はい、よろしくお願いします。そちらにまず向かいます」 「道あけてくださーい!通りまーす!」 この日行われていたのは、県内外の登山関係者が参加した研修会。 *中田裕子さん 「(具合が悪いのは)どなたでしょうか」 参加した男性が登山途中に足の筋肉のけいれんを訴えていました。 *中田裕子さん 「かなり『脱水』なんじゃないかな。こういう合羽を着るとすごく汗が出る。自分で思っている以上に(水分を)摂ってない」 救護にあたったのは、研修会に同行していた富山市の中田裕子さん(63)。 日本登山医学会公認の「山岳看護師」です。 山岳地域で医療活動をする「山岳看護師」。 中田さんは年間を通して、山登りのイベントや高校の登山部の大会に同行したり。 夏山シーズンには、北アルプスの山小屋や立山室堂の診療所で救護活動を行ったりしています。 *中田裕子さん 「(今日は)足が上がっていない方が何人かいるので。その方には水分を摂るように途中で声をかけた。『山登りはつらい』ってなるのが一番嫌で。楽しい思い出をつくって帰ってほしい」 山岳看護師はハイレベルな登山技術に加え、特殊な山岳環境での医療知識を併せ持つスペシャリスト。 2016年に始まった日本登山医学会の新しい認定制度で、現在全国でおよそ100人が活動しています。 県内の山岳看護師は2人。 そのひとりで、6年前に(2018年)富山で初めて資格を取得したのが中田さんです。 3年前に定年を迎えるまでは県中央病院で看護師として働いていました。 もともと登山が趣味だったことから興味を持った「山岳看護師」。 1年ほどかけて講習会や実習に参加し、試験を受けました。 ザックの中を見せてもらうと...。 *中田裕子さん 「捻挫したりしたとき用の『パッド』。テーピングできるようにあらかじめ切ってある。これをかかとの方から貼って...」 *Q.何があってもいいようにひと通り持ち歩いている? *中田裕子さん 「(イベントの)主催者の方も準備してくれるけど何かあったときに足りなかったりすると(よくない)」 山岳看護師の活動はボランティア。 平日はケアマネージャーとして、居宅支援事業所で働いています。 困っている誰かのために、自分ができることをしたい。 その思いを強くしたのは、資格取得直後のことでした。 夏山シーズン、北アルプス・薬師岳の麓、太郎平小屋に3日間滞在し救護を担当したときのこと。 *中田裕子さん 「忘れもしない。すごく(大勢の)お客さんが上がってきて。縦走してきた方が低体温でけいれんを起こしたり、もう救護室が入れないくらいの状態になった年があった。(登山者は低体温で)真っ青な顔して手足がたがた震えて。18人くらい(3日間で)診た。もっと大きい事故が起こるんじゃないかというのがすごく危惧された。本当にちょっと怖いなと思った」 *前年も登山教室に参加した女性 「(去年の登山教室でも)ずっと付き合っていただいた」 山でつらい思い出をつくってほしくない...。 *中田裕子さん 「嫌な思いをしてほしくないし、怖い思いをしてほしくない。やっぱり絶対にけがをしてほしくない、死んでほしくないっていう思いがある。山は怖いところだけれども、素晴らしいところでもあるとやっぱり知ってほしい。せっかく富山県に生まれたんだから」 中田さんは山岳看護師としてこれからも活動を続けます。
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