痩せ型でも「糖尿病」になるのはご存知ですか? 予防法・治療法も医師が解説!
痩せ型の人が糖尿病になった際の治療方法 食事より運動療法・薬・注射が効果的?
編集部: 痩せ型の人が糖尿病になったら、どのような治療をおこなうのですか? 佐藤先生: 肥満の人が糖尿病を発症した場合は減量が基本ですが、痩せている人の場合には減量よりも、むしろ栄養バランスの良い食事を適量、しっかり摂ることを目指します。痩せ型の若い女性は食事量が少なく、糖質に偏っていることが多いので、そうした食習慣を改めて、特にタンパク質の積極的な摂取を推奨しています。 編集部: そのほかには、どのように治療が進められるのですか? 佐藤先生: 運動療法と薬物療法も並行しておこないます。肥満の糖尿病患者の場合には、減量を目的として運動療法をすることが多いのですが、痩せている患者の場合には減量ではなく、インスリンの効きをよくすることを目的におこないます。 編集部: なぜ、運動療法が必要なのですか? 佐藤先生: そもそも、運動には有酸素運動と無酸素運動があります。有酸素運動とはジョギングやウォーキングのように、体内に酸素を取り込みながら、糖質や体脂肪をエネルギー源として燃焼させる運動のことです。一方、無酸素運動とは、酸素を使わずにエネルギーを作り出す運動のことを指します。インスリンの効きをよくするためには、この両方の運動が必要です。 編集部: なぜですか? 佐藤先生: 有酸素運動をして筋肉への血流が増えると、どんどんブドウ糖が細胞に取り込まれてインスリンの効果が高まり、細胞がブドウ糖を使えるようになって血糖値が低下します。また、筋力トレーニングによって筋肉を増やすことも、筋肉内に蓄積された異所性脂肪を減少させ、インスリンの働きを高めるのに役立ちます。 編集部: なるほど。有酸素運動と無酸素運動の両方が必要なのですね。 佐藤先生: 加えて、有酸素運動をすることによって、インスリンとは独立した機序で筋肉にブドウ糖が取り込まれるということもあります。このように、インスリン抵抗性を改善するために、運動療法が必要なのです。 編集部: 食事療法と運動療法は、どちらかだけではダメなのですか? 佐藤先生: 痩せている人の多くは食事の栄養バランスが悪いという現状があります。研究で明らかになったのは、痩せている女性で遊離脂肪酸が増えている人が多いということです。遊離脂肪酸が高すぎると、脂肪毒性を持つと言われています。痩せている人は白色脂肪細胞に脂肪を蓄積させることができず、高遊離脂肪酸により肝臓や筋肉に脂肪が溜まります。これはいわばフォアグラや霜降り肉のような状態で、健康的ではありません。本来肝臓や筋肉は脂肪が蓄積する場所ではないにも関わらず、そこに脂肪が溜まってしまうことで、さらにインスリン抵抗性が増してしまいます。 編集部: すると、遊離脂肪酸を減らすことが必要なのですね。 佐藤先生: はい。そのためには食事に気をつけるとともに、しっかり運動をすることが必要です。無酸素運動と有酸素運動の組み合わせで遊離脂肪酸を減らすことができるので、どちらの運動も必要になってきます。 編集部: 薬物療法についても教えてください。 佐藤先生: 薬物療法では、その人に適した薬を用いることが重要です。痩せ型で分泌量が低下している人はインスリン分泌量を増やす薬を使いますし、インスリン分泌が極度に低下している場合にはインスリンを使用することもあります。インスリンの効きが悪くなっている場合には抵抗性を改善する薬を服用していただきます。