ルネサス、Armベースの次世代SoCおよびマイコンを投入へ…本格的なSDVの実用化視野に
ルネサスはSDVに向けた次世代のSoCマイコンのロードマップを発表した
ルネサス エレクトロニクス(以下ルネサス)は11月7日、新たにArmベースとなった次世代の車載SoCおよびマイコン製品を投入するロードマップを公開。自動車業界が置かれている市場環境の変化に対応するため、同社は2024年以降、順次、新製品として投入することを表明した。 ◆E/Eアーキテクチャはドメイン型からゾーン型へ 本ロードマップについて解説したのは、ルネサスでハイパフォーマンスコンピューティング・マーケティング兼ビジネスディベロップメントユニット長を務める布施武司氏。 布施氏はまず、「自動車業界が置かれている市場環境は、アーキテクチャの簡素化、SDV(Software-Defined-Vehicle)の実現、ハーネス/車両の軽量化、燃費/電力消費に対応することがトレンドになっている」と説明。この状況の中でルネサスは、「センサ/アクチュエータやメインコントロール、パイパフォーマンスコンピューティングまで一手に引き受けられる数少ない会社の一つである」とした。 そんな同社の優位性を活かして投入されるのが、第5世代となるR-CarファミリによるSoC(System on Chip)のプラットフォーム化である。 Armベースのプラットフォームとすることで、完全なスケーラビリティと高いフレキシビリティを提供 この第5世代R-Carの最大の特徴は、次の10年に向けた完全なスケーラビリティと高いフレキシビリティを提供できることにある。世界的に進む自動車の電動化やCO2排出削減規制は、E/E(電気・電子)アーキテクチャを第2世代のドメイン型アーキテクチャからゾーン型アーキテクチャへの移行を求めようとしている。これは自動車の各機能やコンポーネントを高性能なセントラルECUでの処理を行うことを意味し、この対応こそがSDVの実用化に貢献することにつながるのだ。 ◆プラットフォーム化において「チップレットのアーキテクチャ」導入 そんな中で見逃せないのが、ルネサスが第5世代R-Carによるプラットフォーム化で新たに導入される「チップレットのアーキテクチャ」。 チップレットとは、製造技術において世代や用途が異なるチップを一つのユニットに組み合わせて、1つのチップのように扱えるようにする技術のことだ。この導入により第5世代R-Carは、性能や消費電力、コストなどを考慮した様々なユースケースに対応できる能力と、カスタマイズも可能な柔軟なプラットフォームが可能になるという。 第5世代R-Car SoCはSDV向けを想定して設計されている 布施氏の説明によれば、「第3世代および第4世代のR-Carでは、SoCをArmベースで提供し、マイコンはRH850/RL78とする独自のアーキテクチャで進めてきた。このRH850/RL78は今後も第4世代として開発を継続していくが、第5世代R-Carはそこでフォローできなかったニーズに対応することを目的としたプラットフォームになる」と説明。この第5世代について「その基本的な流れはこれまで通り引き継いでいくものの、第5世代はそれとは少し違う兄弟のようなラインになる」と表現した。 これにより、たとえば先進運転支援システム(ADAS)向けに高いAI処理能力が必要な場合は、AIアクセラレータを1パッケージに統合するなど、高いフレキシビリティを提供し、これが迅速な市場投入につながっていくことになる。 ◆Armコア搭載「クロスオーバーマイコン」と「車載制御用マイコン」を投入 では、具体的にどんな新製品が登場するのか。この日の説明で明らかにされたのは、Armコアを搭載した「クロスオーバーマイコン」と「車載制御用マイコン」である。第4世代までの車載マイコンにはルネサス独自のコアを使っていたが、第5世代では多くのIoT機器で主流となっているArmコアの採用も加えることで、本格的なSDVの実用化を視野に入れていく考えだ。
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レスポンス 会田肇