「セクハラは原則降格」パナソニック子会社の厳格なコンプラに広がった不安「ぬれぎぬはないの?」 専門家「認定には適切な段階を踏む」と心配払拭
一度でもセクハラがあったら原則降格―。日本の企業で最も厳しいレベルを目指したというパナソニックコネクトの人事制度が今年2月に報じられると、ネット上では「ぬれぎぬでも降格になってしまうのか」「パワハラはどうなのか」との声が上がった。企業のコンプライアンス(法令順守)の取り組みが年々厳しくなる中、こうした不安はもっともだ。何をどう気をつければいいのか。罰則の強化でかえって被害を申告しにくくならないだろうか。ハラスメント認定の実態を専門家に聞いてみると、不安の声を払拭してくれる力強い答えが聞けた。(共同通信=浜田珠実) ▽外資系企業なら当日クビ パナソニックコネクトは、パナソニックホールディングスの子会社で製造や物流現場の効率化支援ソフトや、航空機の座席で見られるエンターテインメントシステムなどを手がけている。社長の樋口泰行氏は日本マイクロソフトの会長を務めた経験があり、外資系企業のコンプライアンスにまつわる事業環境に詳しい。
樋口社長はこう強調する。「ハラスメントに関して日本ではいろいろな状況を考慮するが、海外ではその日のうちにfire(クビ)もあり得るという厳しいやり方をしている。トップでも職を失う。そういう雰囲気だった」 罰則を2022年10月末から導入し、半年が過ぎた。効果や影響は出ているのだろうか。 「断言するには期間が短いが、減ったという感触はある。声を上げやすくなったおかげで件数は一時的に増えた。セクハラを訴えてもいいんだという認識が社員に浸透しつつある」と話す。ハラスメントの認定は経営の執行ラインから独立したコンプライアンス委員会が行っており、公平な判断を求める仕組みをつくった。 事案のレベルごとに罰則を設け、基準を社員に公表している。例えば、実際にセクハラに当たる言動があった場合、情状酌量の余地がなければ原則降格となる。ただ、性的に不快な写真や絵などを人の目に触れる場所に置くといったいわゆる「環境型セクハラ」などは、軽度と判断された場合は一発降格とはならない。