日鉄テクノロジーと竹中工務店、数百年さびない「和鉄」再現。木造建築向け鋼材として商品化・太宰府天満宮の社殿修理に初適用
日鉄テクノロジー(社長・谷本進治氏)と竹中工務店は11日、日本古来の「たたら製鉄法」でしか造れないとされてきた「和鉄」を現代の製法で再現することに成功したと発表した。数百年さびないという耐食性に注目し、木造建築向け鋼材として開発・商品化した。くぎや金具など、社寺や城郭など文化財の修理・復元用途で需要を見込む。和鉄は現在も一部地域で造られるものの、供給量は少ない。文化財の修復材の安定供給に道を開く成果とも言えそうだ。 「REI―和―TETSU(れいわてつ)」と命名し商品化した(特許出願中)。第1弾として日鉄テクノロジーが兵庫県尼崎市の事業拠点で高炉銑を原料に30キログラムを製造。この一部を用いて作った金具やくぎなどが今年5月、福岡県太宰府市の太宰府天満宮の社殿修理に初適用された。 供給したのは先端が二股に分かれる「八双金具」7枚や、金物を留める448本の「鋲(びょう)くぎ」など。製作は横山金具工房(京都市)が担当した。 当面は少量を受注生産し、本格的な量産化は今後検討する。 日鉄テクノは2020年に開発を開始した。最新分析機器を駆使し、国の重要文化財から提供を受けた和釘を解析。その材料組成を明らかにしたほか、和釘には木材中で時間が経過するほど耐食性が高まる材料特性があることを突き止めた。 木材中で耐食性が増すのは、和鉄表面の酸化皮膜が時間の経過とともに強固になるためと推定。内部へのさびの進行を抑える効果があり、結果として耐食性が高まる。ニッケルなどの極微量な含有元素がこの効果を生んでいるとみている。 こうして得られた分析結果を基に材料成分を微調整し、REI―和―TETSUの開発にこぎつけた。 砂鉄と木炭を原料に造るたたら法の和鉄は、江戸時代末期まで国内の木造建築に広く使われていた。さびに強く接合が容易という特長を持ち、現在もたたらを継承している一部の地域で刀剣用に製造が続けられている。 だが和鉄の供給量は限られ、建築用途では入手が難しい。そのためこれまでは、文化財の修復で和鉄に代わり一般構造用圧延鋼材(SS400)や鉄線などが用いられてきた。 日鉄テクノの文化財調査・研究室の渡邊緩子室長は「文化財の保存修理や伝統木造建築の復元工事では、できる限り往時を継承した技術や材料を用いることが望ましい。伝統の技を未来に継承したいと考えたことが今回の開発のきっかけ」と話している。 日鉄テクノロジーは日本製鉄の試験子会社で、鉄鋼で培った金属材料の詳細な成分分析に強みを持つ。この技術を応用した文化財の調査・研究に長年取り組んでおり、古代の鉄製遺物や銅鏡といった文化財の製作年・産地の推定などでも実績が豊富だ。 今回のプロジェクトでは、材料や腐食、製鋼、分析の各専門家から成る社内チームを結成。伝統建築の補修を手掛ける竹中工務店と連携し、開発に取り組んだ。