レッドブル&HRC密着:予選2番手を実現した攻めの冷却仕様と、決勝のペース不足という難題
大気圧が低いメキシコシティGPでは、冷却性能を最大限高める仕様のボティワークが投入される。しかし冷却性能だけを考えて、開口部が大きいエンジンカウルを投入すれば、マシン表面の空気の流れが乱れ空力性能が落ちる。空気密度が低いメキシコでは平地と同じ仕様の空力パッケージでも、ダウンフォースが平地よりも落ちる。そのため、冷却性能を高めつつ、できるだけ空力性能を落とさないパッケージが求められる。 【写真】HRCの折原伸太郎トラックサイドゼネラルマネージャー 2024年のホンダRBPTのパワーユニット(PU)は、2023年までに比べて水温や油温をできるだけ高い温度でオペレーションできるエンジンの温度環境を確立している。つまり、冷却性能に厳しいメキシコシティGPは、まさに今年ホンダRBPTのPUを開発・運営しているホンダ・レーシング(HRC)のエンジニアにとって、努力した結果を見ることができる舞台でもある。 エンジンの設定温度を上げる方法には、エンジンの骨格が持っている耐熱性のマージンを削る作業が主になる。HRC Sakuraのベンチでどこまでは上げられるかをテストし確認した上で、上限値を昨年よりも引き上げた。 しかし、残り5戦。ドライバーズ選手権でマックス・フェルスタッペン(レッドブル)と2位ランド・ノリス(マクラーレン)との差は57点。また、コンストラクターズ選手権でトップに立つマクラーレンとレッドブル・ホンダRBPTとの差は40点。3位のフェラーリとの差は8点。両タイトルとも接戦のまま、終盤戦に突入している状況で、レッドブルがHRCに対し、冷却性能に関してパフォーマンスアップのためにどこまで攻めることができるかと相談してきたという。 HRCの折原伸太郎トラックサイドゼネラルマネージャーはこう語る。 「メキシコシティGPに向けて、クーリングをどこまで攻められるかを話し合いました。開ければクーリング的には楽になりますが、それではタイムが上がらないので、どこまでマージンを削れるかがポイントになります」 車体のセッティングは土曜日の予選でコースインした瞬間から変更できない。ライバルのマクラーレンやフェラーリが大型のルーバーを何枚も搭載した今年最も開口部の面積が大きいボディワークを採用してきたのに対して、レッドブルのルーバーはハンガリーGPとほぼ同等。ただし、ルーバー以外の部分で冷却性能を高め、極力空力性能を犠牲にしない冷却仕様で臨んだ。 その甲斐あって、予選ではフェルスタッペンがフロントロウにつけたが、日曜日のレースではマクラーレンとフェラーリのペースについていくことができなかった。そのため、スタート直後に先頭に立ったフェルスタッペンだが、すぐにポールポジションからスタートしていたカルロス・サインツ(フェラーリ)にオーバーテイクされ、その後もノリスに激しく迫られる展開となる。 さらにこのときのノリスとの攻防で、フェルスタッペンは10秒ペナルティを2回取られ、合計20秒のペナルティを科せられてしまう。26周目にピットインしたフェルスタッペンが24秒の静止時間の後にコースに復帰すると15番手までポジションを落とすこととなった。 その後、着実にポジションを挽回していったフェルスタッペンだったが、追い上げは6位まで。ダブル表彰台となったフェラーリにコンストラクターズ選手権で抜かれ3位に転落しただけでなく、ノリスが2位となったため、ドライバーズ選手権でもその差は57点から47点へと10点縮まった。 レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は、「マックスへの20秒ペナルティは厳しすぎる」とスチュワードの裁定に納得していないが、再審査を要求することはないと語る。 一方、フェルスタッペンはこの日の真の問題はペナルティではないと言う。 「最終的に、ペナルティに同意しようがしまいが、ペナルティは与えられる。だから、それは問題ではない。僕にとっていま一番の問題は、僕たちのクルマにペースがまったくないことだ。特にタイヤに苦戦した」 次戦サンパウロGPまでの4日間で、いかに立て直すことができるかにタイトルの行方がかかっている。 [オートスポーツweb 2024年10月28日]