ウクライナが劣勢を強いられる「一時的な国際環境の流れ」
「ブダペスト覚書」英米に裏切られたウクライナ
飯田)ウクライナにとっては、自国の領土を蹂躙され続けた10年になるわけですから、ここで諦めることはできない。 細谷)1994年12月の「ブダペスト覚書」でアメリカ・イギリス・ロシアは、ウクライナが核を放棄する代わりに、ロシアだけではなく、アメリカとイギリスもウクライナの領土主権を守るというアシュアランスを提供すると言ったわけです。ウクライナからすれば、アメリカとイギリスにも騙されたという心地でしょうし、大きな不満だと思います。
一時的な国際環境の流れで劣勢を強いられているウクライナ
飯田)ここへきて、西側の支援にも暗雲が垂れ込めていますか? 細谷)いまウクライナは劣勢に苦しんでいます。ゼレンスキー大統領も認めていますが、最大の理由は、昨年(2023年)末からロシアへ大量に北朝鮮とイランの兵器が入っていることです。北朝鮮からの弾薬と、イランからのドローン。ロシアはそれを効果的に使って攻めています。その前の段階では、ロシアは弾薬もドローンも足りなかったわけです。特に経済制裁の効果で、ドローンのような先端的な機器の部品入手は困難でしたが、イランから入るようになった。もともとイランも北朝鮮も国連制裁を受けている国で、結局はそういう国からしか入手できない。逆にウクライナ側は、アメリカ議会下院が支援を止めていますから、本来入るはずの9兆円規模の支援が入ってきません。一時的な国際環境の流れで、苦境に立たされているのです。
EUと欧州諸国の支援を足すと実はアメリカの2倍
飯田)現状、足元はロシア優勢になっていますが、また反転する可能性もありますか? 細谷)よいニュースとしては2月1日、欧州連合(EU)による8兆円規模の支援の合意が出ています。これは大きい支援です。「アメリカからの支援」ばかりが注目されていますが、実はいままでの資金で考えると、EUと欧州諸国の支援を足すとアメリカの2倍規模なのです。
世界中から先端的な兵器が入ってくるウクライナ ~古い兵器に頼らざるを得ないロシア
細谷)トランプ前大統領は「ヨーロッパは何もやっていないではないか」と言っていますが、それは間違いで、EUと欧州諸国の支援を足すとアメリカを遥かに上回っている。それが戦争継続を支えているわけです。しかも、ロシアとウクライナで決定的に違うのは、世界中から先端的な兵器、さらには部品が入ってくることです。 飯田)ウクライナの方には。 細谷)時間が経てば経つほど、ロシアは旧来型の古い兵器に頼らざるを得ないですし、国内での生産も難しい。一方、ウクライナは世界中から先端的な兵器が入る。特に、いま訓練中ですが、航空戦力でF16が夏から配備される予定です。最強の戦車と言われているエイブラムスも今後、数多く入ってきますので、おそらく今年(2024年)の夏から来年にかけて反転していくのだと思います。