子供の安全を守れ 埼玉県の児相と県警が児童虐待への対処能力高める合同訓練
増加傾向にある児童虐待への対処能力を高めるため、さいたま市北区の埼玉県警察学校で、県とさいたま市、県警による合同訓練が行われた。訓練は児童相談所が県警の援助を受けて児童虐待が疑われる保護者方に強制的に立ち入る「臨検・捜索」。県内で臨検・捜索が実施された例は少ないが、関係者は「いつ何時必要になるか分からないので、児相職員には必要な訓練」としている。 ■虐待疑い、令和4年度は全国4番目 県によると、児童虐待に対処する児童相談所は県内に9カ所。県内で虐待が疑われた件数は令和4年度が1万7213件、5年度が17472件で増加傾向にある。4年度は全国で4番目に多かった。一方、県内で臨検・捜索が実施されたのは平成27年と令和3年の2件のみだ。 臨検・検索が少ないのは実施するまでに手順を踏む必要があるため。児童虐待の通報があった場合、児相はまず虐待の事実などを確認。虐待が疑われたら、児相職員が家庭訪問するほか、保護者に児相に出頭するように求める。 これが拒否されると、警察の援助を受けて児相職員が保護者方に立ち入り調査を実施。ただ、これは任意なのでドアを開けないなどされても、児相側はそれ以上踏み込めない。立ち入り調査に応じないと、児相側は再度保護者に出頭を求め、これも拒否された場合、臨検・捜索となる。 臨検・捜索は裁判所の許可を受けて行われ、ドアを開けない場合は強制的に開錠するなどする。ここで子供に虐待が認められれば、児相が子供を一時保護することもあるという。 ■児相のスキルアップ 警察学校での訓練は、敷地内の模擬家屋を使って実施。裁判所から出された許可状を持った児相職員と警察官が虐待の恐れがある家庭を訪れ、子供の状況を確認するなどの内容だった。 保護者役の警察官は、家に入ろうとする児相職員に「家に入れる必要あるのかよ」「児相はそんなに偉いのか」などの暴言を浴びせて抵抗。児相職員は保護者をなだめながら最終的には家に入り、子供の安否確認をしていた。 訓練に参加していた児相の所長は「臨検・捜索にまで至ったことはないが、家庭訪問などでは保護者が暴言を浴びせてくることはある。職員は若い人が多いので、こうした訓練はスキルアップにつながる」と話していた。