【ミャンマー】「抵抗勢力」間で衝突も、乱立で統率取れず
米国の「武力紛争発生地・事件データプロジェクト」(ACLED)は26日、ミャンマーの「抵抗勢力」の間で協力を模索する動きがあるものの、統率が取れず各勢力間の衝突も発生していると報告した。国軍による2021年2月のクーデター後に武装組織が乱立し、ACLEDが世界中で確認した非政府武装勢力の数の21%がミャンマーにあるという。 ミャンマーでは独立以来、国境地帯などで自治権の拡大などを求めて少数民族武装勢力(EAO)が中央政府に対抗してきた。加えて、クーデター後に武力での国軍打倒をうたう組織が各地で誕生。ACLEDは政変後、新たに2,600以上の非政府武装勢力を確認したとしている。 新たに生まれた組織の多くは「国民防衛隊(PDF)」を名乗り、軍政に対抗する民主派政治組織「挙国一致政府(NUG)」は21年5月にPDFの編成を表明。ただ、「影の政府」であるNUGは現地支援力が乏しく、少数民族武装勢力に頼ったり独自に資金を調達したりして活動を続けている組織も多い。NUGと協力していない組織は「地方防衛隊(LDF)」と区別されることもある。 ACLEDは報告で、「(国軍打倒を達成した後の)新たな統治体制を巡る政治的合意の欠如が、国軍に対する統一戦線の実現を不可能にしている」と指摘した。約20存在する少数民族武装勢力は自治権の拡大を重視する傾向が強く、NUGとの協力を拒む勢力や軍政と協力する勢力もある。 昨年10月には中国国境近くで3つの少数民族武装勢力が国軍に対する一斉攻撃「作戦1027」を開始し、北東部シャン州北部で多くの町を占拠した。複数の勢力が協力する作戦の成功例とされるが、中国が停戦するよう圧力をかけている。 3勢力はいずれもシャン州の多数派であるシャン民族ではなく、他民族の勢力拡大を警戒するシャン勢力などとの摩擦が強まる。北西部チン州では小規模な少数民族系グループが乱立しており、隣接する西部ラカイン州で台頭する少数民族武装勢力アラカン軍(AA)とどう付き合っていくかなどで2つの連合に分裂している。 民主派武装組織の抵抗が激しいとされる北部ザガイン地域でも、PDFとLDFとの衝突が散発。「通行料」を徴収する検問所など利権を巡る争いが発生している。 ACLEDは、各勢力が協力できない中、市民が国軍または抵抗勢力に拘束されるリスクが高まっているとも指摘した。特に重要な交易路には複数の検問所が設置されて搾取の温床となっており、「NUG主導の抵抗を支持する人が減る可能性がある」という。