行政学者に聞く「ロックダウン」 強制力は? 市民生活はどうなる?
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京都の小池百合子知事は、このまま何の対策もせずに感染者の増加が続けば「ロックダウンなど強力な措置を取らざるを得なくなる可能性がある」と発言しています。メディアなどでは都市封鎖とも表現される「ロックダウン」。海外では、特定の地域への出入りや、住民の外出を制限する例が出ています。東京で実施されたらどうなるのでしょうか。元都職員で、行政学者の佐々木信夫・中央大名誉教授に聞きました。
Q:そもそも「ロックダウン」とは何を意味するのでしょうか?
感染症対策としては今回初めて使われる言葉で、行政用語としての定義はありませんが、「強制的な外出禁止」と言い換えても良いかもしれません。諸外国の例を見ると都市への出入りを禁じている例もあります。
Q:小池知事の判断だけで取れる措置ですか?
北海道の鈴木直道知事が2月28日に 「緊急事態宣言」を出しましたが、あの宣言には法律的な根拠がなく、強制力はありません。行政による意志の表明や要請、お願いにとどまるもので、「強制力があると思わせる行政指導」と言えます。小池知事が単独で何かを表明したとしても同様です。 先日、埼玉県では、県が自粛要請する中で格闘技イベントが開催されましたが、イベントを中止する権限は行政側にありませんでした。
Q:どういう状態になれば法的根拠を持つのでしょうか?
改正新型インフルエンザ対策特別措置法(特措法)に基づく緊急事態宣言を安倍晋三首相が出せば、各都道府県知事がそれぞれの地域の状況を踏まえ、強制力を伴う対応が可能になります。具体的には(1)仮設の病院を作るために空き地を借りる(2)交通量の多い道を交通制限する(3)人が集まる施設に営業停止を指示する ――などが想定されます。
Q:緊急事態宣言はどういう場合に出されるのでしょうか?
特措法には、(1)国民の生命や健康に著しく重大な被害を与える恐れがある(2)全国的かつ急速なまん延により国民生活と経済に甚大な影響を及ぼす恐れがある――の2要件が認められる場合、と記されています。東京都は首都ですが、東京や近接地域だけでまん延している場合には「全国的」と言えず、安倍首相は宣言を出せません。 宣言を待たずに小池知事が取り得る策としては、都内だけにかかる条例をつくることしかありません。特措法のミニ版というイメージです。しかし、首都機能は東京だけにある訳ではないので「首都封鎖」となると、周辺県と歩調を合わせなければなりません。