<吹け赤い旋風>聖カタリナ 支える人々/中 3年生部員 山田さん(18)・森田さん(18) 失われた目標、思い託し /愛媛
温かい日差しが時折差し込み、球春の到来を予感させる2月下旬、松山市の坊っちゃんスタジアム。「ナイスバッティング」「しっかり振れてるねー!」。活気ある声が響き渡った。声の主は聖カタリナ学園の元主将・山田脩斗(ゆうと)さん(18)、森田統馬(とうま)さん(18)の3年生2人。紅白戦で躍動する後輩らのプレーを頼もしそうに目で追った。 「自分たちの努力は何だったのか。2年半やってきた意味はあったのかな……」。2020年5月20日、テレビが夏の甲子園中止のニュースを報じた。頭が真っ白になった山田さんがふと手元に目を落とすとスマートフォンがしきりに鳴っている。「どうしたらいいんだろう」「もう部活やめようかな」。3年生部員でつくる無料通信アプリ「LINE(ライン)」のグループには暗い書き込みの言葉が並んだ。 それでも時間がたつにつれ、自分たちなりに受け入れ始めた。「目標がなくても仲間と野球をやっている時間がやっぱり楽しい」。間もなくグラウンドに3年全員が戻り、夏の県独自大会まで一緒に駆け抜けた。 「先輩として伝えられることは全部伝えたい」。一緒に過ごした時間は短かったが、その穴を埋めるように引退後も後輩の練習を手伝った。森田さんをはじめ、3年生部員数人でほぼ毎日グラウンドに顔を出す。内外野のノックをはじめ、守備時のゴロ処理の補助、打撃フォームの確認など。「こんな時はどうやったらいいですか?」「打撃がうまくいきません」――。身近な先輩だからこそ聞きやすい部分もあるのだろうと、親身になって相談に乗った。 センバツ決定を受け、山田さんは「本当に彼らは誇りです」、森田さんは「本当にうれしい。自分たちが行きたくても行けなかった甲子園、1勝でも多く勝ち進んでほしい」。そして2人も春からはそれぞれ大学に進学。後輩たちの活躍に思いをはせつつ、自分たちも更なる高みを目指して白球を追うつもりだ。