「ケイコにふさわしい人物になりたい」700万円を「投資」 40代男性が語るロマンス詐欺の実態
交流サイト(SNS)で恋愛感情を抱かせて金銭をだまし取るロマンス詐欺の被害が止まらない。全国の被害額は今年1~8月で236億円を超える。多くはマッチングアプリなどで知り合った相手に対面しないまま大金を詐取される。約700万円の被害に遭った大阪府の40代男性が京都新聞社の取材に応じ、言葉巧みな犯人に翻弄(ほんろう)された経験を語った。 「今から思えば、なぜ引っかかったのか…」。男性は記者を前に肩を落とした。2021年11月、男性はマッチングアプリで「ケイコ」と名乗る人物と知り合い、LINE(ライン)でやりとりを始めた。ケイコは台湾育ちの日本人で金融の知識があり、投資で稼いだ金を慈善事業に寄付しているという。心優しく賢い女性像が浮かび、好意を持つようになった。 「自分も投資をしている」と男性が話すと、「お薦めの証券会社の口座がある」と持ちかけられた。「証券会社のエージェント」だという人物のLINEアカウントを紹介され、指定されたサイトから外国為替証拠金取引(FX)の口座を作った。 「今日100万円を使えば20万円以上の収益が得られる」とケイコに言われ、FXとは関係なさそうな個人名義の銀行口座に振り込みを指示されたところで、男性は不審に思った。送金をためらうと「私も使うから心配ない。あなたのために取引計画を立てる」とせかしてくる。「ケイコにふさわしい人物になりたい」「断れば連絡をくれなくなるかも」という考えが頭をよぎり、100万円を送金した。 金を振り込むと、「クリスマスに初デートをしよう」とケイコは上機嫌に。男性を安心させるためか約1万円の返金があり、サイトの画面上でも高い利益が出ていた。「短期間で最大の利益を得よう」。さらにケイコにあおられ、4日間で合計700万円を振り込んでしまった。 再び詐欺を疑った男性がケイコに解約を申し出ると、「本当にがっかりしました」とライン上でなじられた末、不通に。サイト画面も閲覧できなくなった。結局、ケイコやエージェントとは一度も会うことがなかった。 男性は大阪府警に相談したが、立証が難しいと言われ被害届は出せなかった。「実在する証券会社の名前を出された上、ケイコの投資の成績が圧倒的に良く見えて、信じてしまった。自分のさみしがりな性格を利用されたのかもしれない」と悔やんだ。