驚異の加速「蒸気カタパルト」30tの飛行機が2秒で空へ! ただ米空母の象徴“白煙モクモク”消えるかも
電磁カタパルトは優秀なんだけど……
ただし蒸気式は、製造や整備に技術やノウハウが必要で、世界でもイギリスとアメリカしか開発できませんでした。ソ連(当時)は最後まで実用化できず、フランスは自国空母用の蒸気カタパルトをイギリスやアメリカから輸入しています。 また発明元のイギリスも、空母でのカタパルト運用を止め、艦載機をVTOL(垂直離着陸)機のみにしたため、いまでは蒸気カタパルトを独自に開発し、運用までしているのはアメリカ1国のみです。 なお、アメリカは現在、次世代のカタパルトとして電磁式を開発し、最新の原子力空母「ジェラルド・R・フォード」に採用しています。このタイプは蒸気式よりもさらに細かく射出力の調整ができるほか、圧力充填が必要なく、整備性も良好で、なおかつ装置全体の小型軽量化も図れるなど、様々な点で蒸気式よりも優れています。 一方、中国やロシアも電磁カタパルトの研究開発を行っており、前者については最新空母「福建」に搭載したと言われています。 ちなみに、アメリカ空母から戦闘機などがカタパルト発進する際、甲板上に白い煙が漂っていることがありますが、これは蒸気カタパルトから漏れた水蒸気です。温度が下がり白い湯気になったもののため、電磁カタパルトでは発生しません。 この白い煙は、アメリカ空母での艦載機運用を象徴するもので、映画『トップガン』をはじめとして、アメリカ空母が登場する作品では様々な形で描かれています。しかし、前述したように電磁カタパルトでは白煙が漂うことはまずないため、近い将来、昔をしのぶ懐かしいものになっているかもしれないでしょう。
柘植優介(乗りものライター)