不公平を回避?!田口世界戦で異例のジャッジ構成変更のドタバタ劇
ダブル世界戦(20日・東京大田区総合体育館)の調印式並びに前日計量が19日、大田区総合体育館で行われ、WBA、IBF世界ライトフライ級王者、田口良一(31、ワタナベ)対IBF同級6位、ヘッキー・ブドラー(30、南アフリカ)のジャッジ構成が変更されるという前代未聞の事件が起きた。当初、3人で構成されるジャッジの一人に挑戦者の母国である南アフリカのネヴィル・ホッツ氏が加わっており、日本人ジャッジはいなかった。この日、それを知った田口は「公平性を守って欲しい。嫌だし納得がいかない」と異議を唱えた。ルール上の規定はないが、本来ならばジャッジは公平をきすために中立国の3人で構成されるのが望ましい。日本ボクシングコミッション(JBC)は「アンフェアな印象を与えかねない」と、すぐさまWBA、IBFと協議、調整を行い、南アフリカジャッジは、そのままで、メキシコ人ジャッジと日本人の中村勝彦氏を入れ替えることで構成上のバランスを取った。とんだドタバタ劇となったが、田口は、文句のつけようのない内容で勝ってジャッジ騒動を笑い話で吹き飛ばしたいところだ。なお、計量はダブル世界戦に出場する4選手共に一発でクリアした。
統一王者である田口は記者会見で配られた資料を見て初めて挑戦者と同国の南アフリカ人ジャッジが一人入っていることを知ったという。 「きょう知りました。気になります。公平性を守って欲しい。判定になったら、その人は何でも(ブドラーに)つけますよ。納得がいきません」 静かに不満の炎を燃やして異議を唱えた。 配られた資料によると、田口―ブドラー戦のレフェリーはサミュエル・ウィリアムズ氏(アメリカ)で、3人のジャッジ構成はマイク・フィッツジェラルド氏(アメリカ)、アルフレド・ポランコ氏(メキシコ)、ネヴィル・ホッツ氏(南アフリカ)で、立会人は、安河内剛氏(WBA)、ベンジャミン・ケイルティー氏(豪州)の2人だった。レフェリーは採点に加わらず、もちろん立会人も採点には関係ないが、ジャッジ構成は違和感のあるものだった。まだ日本人が一人、南アフリカが一人、第3国が一人なら理解もできるが、バランスに欠く構成になっていた。 ブドラーは、田口が接戦の末、判定で破ってタイトルを統一したIBF前王者のミラン・メリンド(フィリピン)と昨年9月に1-2の僅差判定で敗れるという激闘を演じた強敵。しかも、その試合は、疑惑のダウンシーンや、ラウンド間に不正な手段で傷口を塞いだなどといういわくつきのもので、ブドラーがIBFに抗議、再戦が命じられていた。だが、メリンドが田口との統一戦を優先させたため、当初から、その試合の勝者がブドラーと対戦することが義務づけられていた。 「判定にもつれこむ可能性は十分にあるし想定しています」と、田口が警戒するほどの相手。それだけに、ジャッジ構成は非常に重要で、端から一人がブドラーを支持するとわかっているようなハンディキャップを負いたくないという気持ちは痛いほどわかる。 南アフリカのジャッジが一人入っていることをWBAの立会人でありJBCの事務局長である安河内氏も、「IBFでは普通のことで、アンフェアだとは思わないが慎重は期したい。アンフェアな印象を与えて混乱が起きかねない」と問題視。計量後のルールミーティングで議案に上げて、急遽、ジャッジが変更されることになった。IBF本部の確認を取った上で、IBF世界ミニマム級王者、京口紘人(ワタナベ)のV2戦をさばくレフェリーのベンジー・エステベス氏(アメリカ)を田口ーブドラー戦のジャッジに回すか、或いは、日本人ジャッジを一人入れてバランスを取るかの調整に入ったが、渡辺均会長の怒りは爆発した 安河内氏の囲み会見の横から割って入ってきて「公平じゃないですよ。JBCのミスでしょう。相手の国のジャッジが入ることを認めるJBCはおかしいでしょう? 選手がかわいそうだ」と、猛抗議した。 それに対して安河内氏も「アンフェアではありません。それでもそういう印象を受けるから調整しているんでしょう?」と声のトーンを高くして、しばし口論になる場面も。結局、ジャッジの入れ替えを調整することで話は収まったが、そもそも、なぜ、こんな問題が起きたのか?