全集刊行、お値段は27万5千円! 日本が生んだ大数学者・関孝和、その業績を紐解いてみた
孝和の偉業はこんな感じだ。自然数を順番に1+2+3+…+nと足していくとする。現代の数学では、結果はnを使った数式で表現できる。おのおのを2乗して足した場合や、3乗して足した数も同様に表すことが可能だ。 孝和はさらに一般化を進め、自然数をk乗して足した場合の表記方法を考え、特殊な数が必要となることを見いだした。スイスの数学者ヤコブ・ベルヌーイが17~18世紀に発見した「ベルヌーイ数」だ。孝和はそれよりも早く発見していた可能性がある。 ▽欧州より200年早く発見 また孝和は円周率を小数点以下12桁まで明らかにした。直径1の円に内接する正四角形や正八角形を考えると、角の数を増やしていくほど各辺の合計の長さは円周に近づく。 孝和は正13万1072角形の辺の長さを自分で計算した上で、無限に続く辺の長さの計算がどんな値に収束するか、精密に得る方法を発見した。これは、欧州では19世紀に見つかった「エイトケンデルタ2乗法」に相当する。孝和は200年ほど先んじていたことになる。
▽取材を終えて これまで数学的な思考とは、私たちが今使っているような表記(アラビア数字や記号などの西洋式の表記)があればこそ発展できたのだと、なぜか思い込んでいました。しかしそのような表記法とはまったく独立した記号を作り数学的な考察を深め、西洋と遜色のない成果を上げた先人がいました。率直に感動を覚えました。幕末の日本が、西洋の科学をいち早く吸収できたのも、孝和の和算があったおかげだという話も聞いたことがあります。数学は普遍的な言葉なのだという認識を新たにしました。