アリスよ、永遠に 谷村新司さん追悼コンサート「言葉にできない思いを託して」 世代超えつながる歌
映像とシンクロ、そこにいるかのように
アリスがデビューしたのは1972年。数々のヒット曲を世に送り出し、78年には日本人アーティストとして初めて日本武道館で3日間の公演を成功させました。81年8月に北京で単独公演を行い、11月に活動停止。その後、何度かの期間限定の再始動を経て、2009年に完全再始動しました。 1970年代のアリス人気をリアルタイムで体験しているのは、AG世代より上の60代、70代が中心だと思いますが、50代半ばの私も小学生の頃、テレビの歌番組やラジオで「冬の稲妻」や「チャンピオン」を聴き、口ずさんでいました。中学3年でフォークギターを手にしたとき、最初に練習したのは「ジョニーの子守唄」でした。 2001年、アリスに初めてインタビューしました。前年の1月17日に神戸で行われた阪神・淡路大震災追悼コンサートをきっかけに再始動したときで、結成30周年記念のアルバム「ALICE 0001」を発表し、全国ツアーも行いました。谷村さんは「リセットして、生まれ変わって楽しくやろう、という気持ちです」、堀内さんは「アリスという幹を支えるには、この先も3人がしっかりと信念を持つことが大事」と話したと、当時の記事に書かれています。 このときの取材中、矢沢さんの携帯電話が何度も鳴りました。電話に出て、「4枚ね」「2枚ね」と、知り合いから次々にコンサートのチケットを頼まれる矢沢さん。その様子を笑いながら見守る谷村さんと堀内さんの優しい表情を今も覚えています。 2019年秋には、連載企画の取材で2回、計5時間近く谷村さんにインタビューしました。24時間に起こること全てが詞の素材になり、完全なオフはないと話しつつ、「音楽や曲作りを苦しいと思ったことは一度もありません」と谷村さん。アリスが超多忙だった30歳の頃に過労で倒れ、追われる時間をぜいたくなものと感じた経験が根底にあったそうで、「何事もとらえ方によって楽しくなるし、そうやって生きる方が絶対に素敵でしょう」と、晴れやかな笑顔で話していました。 谷村さんが亡くなって1年になりますが、今回のアリスのライブでは、谷村さんが目の前で実際に歌っているように感じました。おそらく、ほとんどの観客も同じ感覚だったのではないでしょうか。過去のライブ映像との絶妙なシンクロ効果に加えて、大きな会場ではライブの模様を大画面で見るスタイルが普通になっていることも、違和感なく楽しめた理由の一つでは、と思いました。 アリスとしてのコンサートは、10月13日の大阪城ホール公演が最後かもしれません。でも、半世紀近く愛されてきた多くの作品は、これからもファンの心に残り、時代や世代を超えて歌い継がれていくでしょう。 アリスよ、永遠に。 最近、音楽を聴いていますか。 振り返れば、あなたにもきっと、歌やメロディーに励まされ、癒やされた思い出があるはず。40代、50代になっても、これからもずっと音楽と一緒に過ごせますように。 そんな願いを込めて、子どもの頃から合唱曲やロックを歌い、仕事でも関わってきたAging Gracefullyプロジェクト編集長の坂本が、音楽の話をお届けします。 取材&文=朝日新聞社 Aging Gracefully プロジェクトリーダー/編集長 坂本真子 写真=中嶌英雄撮影(ユニバーサルミュージック提供) ◆アリス コンサート2024「ALICE FOREVER ~アリガトウ~」 10月13日(日)16時開場/17時開演 大阪城ホール 全席指定11,000円(税込み) お問い合わせ:キョードーインフォメーション 0570-200-888 https://kyodo-osaka.co.jp/search/detail/9198 ◆「生中継!アリス コンサート2024 ALICE FOREVER ~アリガトウ~」 WOWOW 10月13日(日)17時から https://www.wowow.co.jp/detail/202251 ◆アリス 公式サイト https://alice1972.com/ ◆アリス コンサート2024「ALICE FOREVER ~アリガトウ~」(2024年9月18日、日本武道館) 1.冬の稲妻 1977年のシングル 2.今はもうだれも 1976年のシングル 3.BURAI 1987年のシングル 4.LIBRA―右の心と左の心― 1981年のアルバム「ALICE IX 謀反」収録 5.あの日のままで 1976年のアルバム「ALICE V」収録 6.やさしさに包まれて 1975年のアルバム「ALICE IV」収録 7.走っておいで恋人よ 1972年のシングル 8.あなたのために 1972年のシングル「明日への讃歌」カップリング 9.ユズリハ 2013年のアルバム「ALICE XI」収録 10.あなたがいるだけで 矢沢透ソロ曲 1978年のアルバム「バラエティー・ツアー」収録 11.それぞれの秋 1980年のシングル 12.秋止符 1979年のアルバム「ALICE VII」収録 13.夢去りし街角 1979年のアルバム「ALICE VII」収録 14.涙の誓い 1978年のアルバム「ALICE VI」収録 15.ジョニーの子守唄 1978年のシングル 16.エスピオナージ 1981年のシングル 17.狂った果実 1979年のアルバム「ALICE VII」収録 18.帰らざる日々 1976年のシングル 19.遠くで汽笛を聞きながら 1976年のシングル ★ENCORE 20.チャンピオン 1978年のシングル 21.GOING HOME 2010年のアルバム「ALICE GOING HOME ~TOUR FINAL at BUDOKAN~」収録 ◇谷村新司さんの記事バックナンバーです ◆(惜別)谷村新司さん シンガー・ソングライター、音楽家 https://www.asahi.com/articles/DA3S15861342.html ◆「人生の贈りもの 谷村新司さん」まとめページ https://www.asahi.com/special/matome/tanimurashinji/
朝日新聞社