タレント武藤千春が語る 東京と長野の二拠点生活で得られた「生きていく力」
9月23日は「ふさ(23)」の語呂合わせで、「ぶどうの日」に制定されているそうです。内陸性の冷涼な気候でワイン用ぶどう栽培の適地とされる長野県小諸市にて、東京から移住して2年で地域の農家を巻き込み、今では耕作放棄地だった700坪の畑でぶどう栽培を手掛ける一人の女性がいます。元E-girlsのアーティストとして活躍し、現在アパレルブランドのプロデューサーやラジオDJとして活躍する「小諸市農ライフアンバサダー」の武藤千春さん(27)。2019年から東京と長野の二拠点生活を始めたことをきっかけに“農”に携わり、今までの生活では得られることのなかった「生きていく力が身についた」といいます。その経験について、話を聞きました。(Yahoo!ニュース Voice)
東京と長野の二拠点生活――使われていない畑を見て始めた農作業
――なぜ長野県小諸市に移住したのでしょうか? 武藤千春: 祖母が「地元の長野県小諸市で老後をゆっくり暮らしたい」という思いがあり、その移住先の家探しなどのサポートのために私も小諸市を訪れたことがきっかけでした。 小諸市の“空気感”にとても魅力を感じたのと、東京から新幹線を使って90分ほどで着くアクセスの良さにも魅力を感じ、「思い切って移住するぞ」という感覚ではなく、ほどよく田舎の生活を日常に取り入れることができるかもしれないと思い決断しました。2019年12月に小諸市に拠点を構えてからは、基本的に小諸市で畑作業やプライベートの時間を過ごして、ラジオ番組の収録など仕事がある時に新幹線を利用して東京に行く二拠点生活を送っています。 ――小諸市で畑を始められたのはなぜですか? 武藤千春: 畑は小諸市に拠点を構えてから約1年後に始めました。移住してすぐにコロナ禍になってしまったために外を出歩くことができない状態で、その時間を使って「家族のルーツを探る」ということに数か月取り組んだんです。さまざまな郷土誌や戸籍謄本、除籍謄本を調べたりして“夏休みの自由研究”のような形で、何ページにもなる資料を作りました。 その中で、自分の親戚が長野県佐久市に多くいることや、その佐久市で血の繋がった80歳の親戚が1人で農業をしていることを知り、その方と連絡をとって話をしているうちに“農業”を身近に感じ始めたことがきっかけでした。その親戚の自宅前に、耕作放棄地になってしまっている20坪ほどの畑があり「もったいないし、20坪ぐらいだったら私が何かを植えて作ってみよう」と畑を始めました。 そこからYouTubeやネット上で情報を調べて、好きな野菜を育てるところからやり始めて、現在は小諸市内の320坪の畑で約40種類の野菜を少量多品目で育てています。今年からは地域の農家さんにも手伝ってもらいながら耕作放棄地だった畑でワイン用ぶどうを栽培していて、始めた頃から比べるとかなり広がっています。 ――未経験の農作業でここまでやるのは大変だったのではないでしょうか。 武藤千春: 私は“新規就農者”ではないので、今でも農業という感覚はなく、私自身は家庭菜園の延長という気軽な気持ちでやっています。もちろん最初は失敗だらけで、それこそ種を植えて発芽しなかったことや、自分の仕事のスケジュールが状況によって変化する中で、その時栽培していたキュウリが1日置くだけでも巨大化してしまって、昨年は収穫に追われてしまい苦労することもありました。なので、毎日手をかけなきゃいけない作物は避けたり、今年は違う野菜に変えたりして、自分の暮らしに合わせてデザインしていけるのが農の素晴らしいところだと思います。 農とのかかわり方は、必ずしも新規就農をして事業計画を作って農協や近所の市場スーパーに卸すことだけじゃないと感じていて、思っている以上に農がクリエイティブなことだと分かると、かなりハードル低く、自分の暮らしにバランスのよい形で農を取り入れられるのではと思います。