健康な食品作りの原料・技術面を研究。グリコ健康科学研究所マネジャー釜阪寛さん/大阪
大阪市西淀川区の阪神高速池田線を車で走っていると目に入ってくるのが、両手を上げた男性ランナーが描かれた大きな看板。製菓メーカー「江崎グリコ」の本社だ。グリコといえばチョコレートなどのお菓子のイメージが強いが、この本社内には、健康づくりのあり方を考え研究する「健康科学研究所」があるという。ひたむきに研究を続けるマネジャーに話しを聞いてみた。 大阪・道頓堀のグリコ看板歴史振り返り・現看板の動画も
試行錯誤を繰り返しPOs-Ca開発
「社内にはポッキーなどおなじみの商品を作り出す『商品開発研究所』と健康な食品作りをしていくため原料面や技術面から研究する、私たち『健康科学研究所』があるんです」と語るのは、グリコ健康科学研究所のマネジャーで農学博士の釜阪寛さん(49)。これまで様々な研究に携わってきたが、長年携わっているもののひとつが「POs-Ca(ポスカ)」というガムだ。 釜阪さんの話では、歯の表面はカルシウムの結晶が集まってできているが酸には弱く、食事後の口の中は糖の分解によって酸が作られカルシウムを溶かす。その状態が続くと、歯に穴があいていないものの、カルシウムがスカスカとなった初期むし歯の状態になるという。「食事をすませた後は、初期むし歯の状態でもカルシウムとリンが足りていればカルシウムが元に戻る『再石灰化』されるんですが、だ液のカルシウムは再石灰化に良い量はないんですね」 カルシウムは水にとけず吸収されにくい。そこで、釜阪さんらのチームは歯にカルシウムを届けやすいものを作ろうと研究。リンにブドウ糖があれば溶けやすいことから、ジャガイモのでんぷんに含まれているリンに着目。北海道にでんぷんを原料に液化、糖化して精製し果糖ブドウ糖液を作る工場の存在を知り、製造過程で精製した後に残った糖化液を使った結果、水に溶けやすい「リン酸化オリゴ糖カルシウム(POs-Ca)」を開発することに成功した。そして、それを使って歯の再結晶化をはかるガム「POs-Ca」が作られた。