20歳の学生起業家、スポーツをする側から支える側へ 選手の「人生」をテクノロジーで応援
学生の間で起業の機運が高まっている。大学も学生が自ら会社を起こしてアイデアを具現化する「学生ベンチャー」を生み出そうと、支援に乗り出している。独自のビジネスを展開する学生を取材した。AERA 2024年6月3日号より。 【図を見る】1位の大学は? 「大学発ベンチャー輩出トップ20」はこちら * * * 武蔵野大学は、アントレプレナーシップ学部という起業家精神に特化した学部を21年に開設した。これまでに約10人が起業して、確認できているだけでも57のプロジェクトが動いている。 学部長の伊藤羊一さんは言う。 「普通は、『これやってみたい』と言うと、友達からは『意識高い系』と馬鹿にされるし、保護者からは『どうせ無理』なんて言われることがありますよね。それでは、学生がやりたいことなんて見つけることはできません」 伊藤学部長は学生の意見を聞いた後は、「いいね! じゃあどうする?」と返すのだという。 「夢を語ってほしいんです。フェイスブックを作ったマーク・ザッカーバーグは『女の子と知り合いたい』というのが着想の原点でした。日常の不満を解決したい、でいいんです」 ■学生のうちに失敗経験 同学部3年の板本大輝さん(20)は22年、株式会社Emer(エマー)を立ち上げた。スポーツの分野にテクノロジーを活用するスポーツテック企業だ。8月にはスポーツ選手の「人生」を応援するプラットフォーム「UPSTAR(アップスター)」をリリースする予定だ。 利用者は応援しているスポーツ選手からメッセージを受け取ることができる。内容は日々の挑戦や葛藤、趣味まで多岐にわたる。応援メッセージを送ることもできる。選手にとっては収入源となり、ファンの応援が直接届いてモチベーションアップにもなる。現在は関東フットサルリーグ1部のファイルフォックス八王子が試験導入している。 島根育ちの板本さんはプロのサッカー選手を目指していたが、中学3年の頃、選手の道を諦め、気力を失っていた。高校入学後、スポーツをする側から支える側になると決意し、スポーツのライブ中継の支援事業を始めた。事業を展開する中で伊藤学部長と出会い、直感で武蔵野大学の受験を決めたのだという。
板本さんは今、事業に集中するために休学中。東京のワンルームで、同級生と2人で進めている。これまでは自己資金で事業を展開していたが、今年5月に6人の個人投資家から資金調達を受けて、さらなる事業展開を目指す。伊藤学部長は言う。 「大学生のうちにたくさん経験して、失敗した方がいいと思います。それが成功につながりますから」 (編集部・井上有紀子) ※AERA 2024年6月3日号より抜粋
井上有紀子