低所得者には追加の給付も…「厚生年金と国民年金」受給額を増やす5つの方法とは
【厚生年金と国民年金】リアルな平均月額
厚生労働省年金局の「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金と厚生年金(国民年金を含む)それぞれの平均月額は下記のとおりです。 ●国民年金の平均月額 ・全体:5万6316円 ・男性:5万8798円 ・女性:5万4426円 ●厚生年金の平均月額(国民年金を含む) ・全体:14万3973円 ・男性:16万3875円 ・女性:10万4878円 国民年金は保険料が一律であることから、受給額にあまり個人差が生じませんが、月に受け取れる年金額は5万円程度となっています。 一方で厚生年金は、年収によって保険料が変動することと、加入期間も受給額に影響することから、年金月額に個人差が生じやすくなっています。 厚生年金の全体の平均月額は約14万円となっており、国民年金と比較すると高くなっていますが、現役時代の収入と比較すると「少ない」と感じる方もいるでしょう。 では、年金受給額をより増やすための方法はあるのでしょうか。 次章にて、老後に受け取る年金受給額を増やす5つの方法について見ていきましょう。
老後に受け取る年金受給額を増やす5つの方法
本章では、老後に受け取る年金受給額を増やすための方法を5つ、ピックアップして紹介していきます。 年金受給額を増やす方法によっては「対象となる人」や「関与している年金種類」が異なるため、ご自身が活用できる方法はどれか確認しておきましょう。 ●年金の繰下げ受給 年金の繰下げ受給とは、老後に受け取る年金の受給開始年齢を遅らせることで「年金を増額できる制度」です。 本来年金は、原則65歳から受給開始となりますが、繰下げ受給を活用し受給開始年齢を遅らせることで、毎月受け取る年金月額を大幅にアップさせられます。 増額率は「繰り下げた月数×0.7%」で、最大で84%もの増額ができ、増額率は生涯変わりません。 たとえば、年金の受給開始を70歳まで繰下げた場合、「60ヶ月(5年×12ヶ月)×0.7%」で、増額率は42%となります。 仮に年金額が15万円だった場合、70歳まで受給期間を繰下げることで毎月6万3000円増額され、「月額21万3000円」を受給することができるようになります。 なお、繰下げ受給は国民年金・厚生年金どちらにも活用でき、「どちらか一方のみ」という選択も可能です。 留意点として、繰下げ受給期間中は年金受給ができない他、加給年金や振替加算が受け取れなくなるケースもあるため、メリット・デメリットを理解したうえで検討できると良いでしょう。 ●年収を上げる/長く働く 現役時代の年収を上げることで、厚生年金の受給額をアップさせることができます。 前章でお伝えしたように、厚生年金は現役時代の年収によって保険料が変わり、年収が高いほど保険料も増加します。 保険料が増加するため現役時代は負担が大きいと感じますが、その分、老後に受け取れる年金額を増やせるのです。 また、厚生年金の受給額は現役時代の保険料だけでなく「加入期間」も大きく影響しているため、現役時代に長く厚生年金に加入しているほど受給額をアップさせられます。 ●年金の(高齢)任意加入制度 (高齢)任意加入制度は、国民年金の加入期間中に「未加入期間」や「未納期間」があり、満額受給できない人への救済措置制度です。 国民年金の未加入期間や未納期間がある場合、老齢基礎年金が満額受給できなくなってしまいますが、(高齢)任意加入の申出をすることで、受給額を満額に近づけることができます。 対象者は、下記の要件に全て該当する場合に限ります。 ・日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満 ・老齢基礎年金の繰上げ支給を受けていない ・20歳以上60歳未満までの保険料の納付月数が40年(480ヶ月)未満 ・申出時点で厚生(共済)年金に加入していない 留意点として、(高齢)任意加入制度は、過去にさかのぼっての加入はできません。 国民年金を満額受給できない方は、制度の活用について早めの検討をおすすめします。 ●国民年金基金 国民年金基金は、国民年金のみ受給の人に対して、老後の年金額を増額できる制度です。 国民年金は厚生年金よりも年金月額が低いため、その差を解消するための公的な年金制度となっています。 対象者は「国民年金の第1号被保険者の方」もしくは「60歳以上65歳未満の方や海外居住者で国民年金に任意加入している方」となっています。 こちらの制度は自営業者やフリーランス向けのものとなっており、会社員や専業主婦などは対象外となるため、留意しておきましょう。 ●国民年金の付加保険料 付加保険料とは、国民年金の定額の保険料に加えて、追加で保険料を納めることで将来受け取れる年金を増やすことができる制度です。 付加保険料は月額400円で、以下の計算式から、国民年金に上乗せ額を算出できます。 【付加保険料によって上乗せされる金額:200円×付加保険料を納めた月数】 たとえば、5年間付加保険料を納めた場合、納める金額は合計「2万4000円」となります。 それに対して、将来増額される年金額は200円×12ヶ月×5年で「1万2000円」となるのです。 実質2年間で、納めた付加保険料よりプラスになります。 付加保険料の対象者は「国民年金の第1号被保険者」と「任意加入被保険者(65歳以上の方は除く)」です。 なお、「保険料の全額免除、一部免除、納付猶予または学生納付特例を受けている方」や「国民年金基金に加入している方」は対象外となるため、あわせて覚えておきましょう。