「女性らしさ」の呪縛から解き放たれ、共に過ごす食事の時間。ふたりの幸せな日常を描く『作りたい女と食べたい女』
彼女たちの「作りたい」「食べたい」の裏には、お仕着せの女性らしさに悩む姿が隠れている。野本さんは料理が趣味だといえば「いいお嫁さんになれそう」と異性からジャッジの対象にされ、春日さんは「女の食事は少なくあるべき、質素であるべき」という実家の慣習に毒されていた。そういった外部の抑圧から解放されて、共にすごす食事の時間を愛おしむ姿はとても穏やかだ。
のちに広がる交友関係の中でも、食べることにプレッシャーを抱く女性や、料理を作る行程にはまったく興味がないと豪語する女性たちが登場する。食や料理にそれぞれの苦悩を抱えつつも、たしかな絆で結ばれた彼女たちが連帯する姿は晴れ晴れしい。 料理を通して育まれた野本さんと春日さんの信頼関係は、やがて恋愛感情へと変化していく。「つくたべ」は女性同士の恋愛を描いた作品としても知られ、ファンはふたりの恋の行方を固唾をのんで見守っている。
本作ではチャリティー活動や新聞広告など、本編以外でも同性同士の恋愛や結婚の難しさを訴える運動を続けている。作ることも食べることも、大切な人のために。社会が生み出したこうあるべきという押しつけの道ではなく、自分らしい生き方を模索する彼女たちの毎日を、これからも見守っていきたい。 文=ネゴト/ あまみん