「うどん県」香川の食卓ピンチ、小麦高騰で世界が争奪戦 ウクライナ侵攻の思わぬ影 #生活危機
爆撃を受けたトラクター 命がけの農作業
輸出ルートはかろうじて維持されたものの、小麦で世界5位、トウモロコシは3位の穀物輸出大国ウクライナの農業は深く傷ついている。ロシア軍に1カ月にわたって包囲された北部チェルニヒウ郊外のイバニフカ村の農場を訪ねると、まるで農機具の墓場だった。 着弾で破壊され、むき出しの赤茶けた鉄の塊となったトラクターやトラックが点々と並ぶ。表面は爆弾の破片が突き刺さった穴だらけだ。 「2台とも新車だったんですよ。金属片がタンクに刺さって炎上しました」 農場を運営する中堅穀物会社アグリコムの事業所部長ビアチェスラブ・ツァリェフさん(53)は怒気を込めた。 農地は戦闘の最前線となり、トラクターなどの農機約50台すべてが被害を受け、うち約15台は大破した。10棟ある建物も半分が倒壊した。倉庫に軍用車両が隠されている、とみたロシア軍が狙った、とツァリェフさんは考えている。 倉庫から100メートルほど離れた茂みに、ひしゃげて燃え焦げた大型コンバインがあった。 作業員が1~2キロ先のリンゴ畑に隠そうしたところ、着弾して炎上したのだという。本人も運転席から投げ出されたが、幸いけがはなかった。「今も農作業ができるのは、作業員がトラクターを避難させてくれたおかげです」 ロシア軍が撤退したいまも、農作業は命がけだ。 大破した農機の脇に、長さ2~3メートルの金属製ミサイルの残骸約30本が並べられていた。大型トラック2台分見つかったという。近くの別の農場では、地雷でトラクター運転中の作業員が死亡した。専門家による安全確認が間に合わなかった畑は、収穫を断念した。 最高経営責任者(CEO)で業界団体トップも務めるペトロ・メルニクさん(44)によると、ロシアが一方的に併合した東部にあった広大な農地も奪われ、損害は7千万ドル(約100億円)に上るという。「肥料をごく少量しか使わないようにしています。正直、生き残るのがやっとです」 ウクライナ穀物協会によると、穀物の生産量、輸出量ともに今年度は4割ほど減る見通しだ。