戦前の日本、会社で働く女性はどんなジャケットを着ていた?【ジャケットと働く女性の100年】
ジャケットコーデに女性の社会進出の歴史が表れている! ジャケットの歴史をひもとくと、女性たちの“生き方”、“働き方”の変化が見えてきました。ジャケットスタイルとともに、働く女性の100年を辿ります。戦前の日本で働く女性が着ていたジャケットとは? ジャケットと働く女性の100年(画像)
ミリタリーテイストなデザインからは、戦争の影も
会社員として働いていた女性はごく一部。「職業婦人」と呼ばれた彼女たちは、バスガールやタイピスト、エレベーターガールなどの職業に就いていた。職場で働く女性は機能的なデザインのツーピースの制服を仕立てて着るのが一般的で、和服で働く人もまだ多かった。 ■ジャケットと働く女性の歴史上のできごと 1923年 ガブリエル シャネルがツイード素材のスーツを制作。 女性に向けた快適で実用的な洋服の礎を築く 1939年 第二次世界大戦が勃発。 本土空襲が開始されてからは、女性の日常服はもんぺに ■ジャケットコーデに女性の社会進出の歴史が表れている お話を伺ったのは 井上雅人さん 武庫川女子大学准教授。専門はファッション史。『ファッションの哲学』など著書多数。 ファッション史を研究する井上さんによると、女性用のジャケットが歴史に登場するのは18世紀。 「ジャケットは西洋で上流階級向けの乗馬服として流行したものの、当時の女性のファッションはワンピース(ドレス)スタイルが基本でした。1920年代、働く女性のための服としてスーツを提案したのがガブリエル シャネルです。第一次世界大戦の影響で働き手が減り、女性も男性のように働かなければいけない時代になったことで、ワンピースよりも動きやすいツーピース(ジャケット+スカート)が定番に。中でもシャネルが発表したツイード生地のスーツは、そのデザインと機能性の高さで大流行します。日本でも大震災や戦争の影響を受けて女性の働き手が増え、ツーピースの洋服は徐々に浸透していきました」(井上さん、以下同) 日本においては1990年代頃まで、女性には制服の着用を義務づける企業も少なくなかった。そのため、ジャケットはあくまで通勤時のおしゃれ着として楽しむ人も多かったようだ。 「一方でアメリカでは1980年代、パワー・ドレッシングと呼ばれるスタイルが流行しました。これは女性が男性と肩を並べて働くための、いわば“圧のある”スーツスタイル。女性の社会進出が日本よりも早かった欧米では、おしゃれさ以上に“デキる女性”に見えるジャケットが必要とされたようです」 1990年代以降になると、不景気や男女雇用機会均等法の影響もあり、制服を廃止する企業が増加。通勤服のまま働く「オフィスカジュアル」が定番に。 「現代のストレスフリーなジャケットの流行は、女性が純粋に働きやすい服装で働けるようになってきた時代の変化をよく表していると思います」 イラスト/ユリコフ・カワヒロ 取材・原文/生湯葉シホ ※BAILA2024年11月号掲載