箱根駅伝予選会は微妙距離延長で逆転ドラマが増える?!
昨年は明大が落選
昨年は気象条件に恵まれたこともあり、明大を除けば、さほど番狂わせはなかった。では、なぜ明大は落選したのか。1万mで28分35秒47のタイムを持つ坂口裕之を体調不良で欠くと、主力の三輪軌道が給水地点で転倒。腰を強打して棄権を余儀なくされた。 エースの不在に不運が重なったことも大きいが、レース戦略も良くなかった。昨年のレースを振り返ると、明大が落選した理由がよくわかるだろう。 下記は昨年の15km通過時点、17.5km通過時点、20kmフィニッシュ時の総合順位だ。 ※( )は通過ラインまでのタイム差。 【15km通過時点】 10位 明大 ---------------------------- 11位 東京国際大(+1:11) 12位 日大(+1:19) 13位 創価大(+2:46) 【17.5km通過時点】 10位 明大 ---------------------------- 11位 東京国際大(+0:02) 12位 日大(+0:35) 13位 創価大(+1:10) 【20kmフィニッシュ】 10位 東京国際大 ---------------------------- 11位 日大(+1:31) 12位 創価大(+2:30) 13位 明大(+2:31) 明大は15km通過時点で総合10位。通過圏内ギリギリにいたとはいえ、11位の東京国際大に1分11秒のリードを奪っていた。しかし、15km以降に失速する。17.5km通過時点で東京国際大とのタイム差はわずか2秒に。最終的には最下位通過した東京国際大に2分31秒差をつけられ、総合13位まで転落した。「15kmからペースを上げていくつもりでしたが、それができませんでした」と西弘美駅伝監督(当時)が話したように明大は終盤にペースダウンする選手が多かった。
予選会は下位選手がカギで「失敗しない戦術」に効果
その中でも顕著だったのが、9~10番目の選手たちだ。 明大は9~10番目が62分をオーバーした(62分18秒と62分29秒)。一方の東京国際大は9~10番目の選手が61分30秒と61分46秒でまとめている。もう少し細かく見てみると、明大のふたりは、15~20kmの5kmを16分10秒と16分19秒も要しているが、東京国際大のふたりは15分45秒と15分43秒でカバー。終盤の5kmだけで、1分01秒もの差がついているのだ。 昨年はスタート時の気温が14度と好条件に恵まれたこともあり、ボーダー争いは過去最高レベルになった。 非常に走りやすいコンディションだったわけだが、気温や湿度が高かったり、日差しが強くなると、終盤の落ち込みはもっと激しくなる。今回は20kmから21.0975kmに距離が延びることで、15km以降にペースダウンするチームはさらにタイムを落とすことになるだろう。箱根駅伝の予選会は、「より速く」よりも、「失敗しない」という戦術に重きを置いた方が、効果を発揮することが多いのだ。 明大は坂口、阿部弘輝、中島大蹴というスピードランナーを擁しており、5000mと1万mの自己ベストだけを見れば、出雲駅伝で優勝を争った東洋大とほとんど変わらない。しかし、今回も足並みが揃わなかったようで、4年生のエントリーは1名のみ。エース坂口は今回も出走しない。今季からコーチだった山本佑樹が駅伝監督に昇格して、チームの指揮を執っている。どんな戦略で予選会に挑むのか。 前回ほどにはならないと思うが、今回も多数のケニア人留学生が参戦するため、高速レースを覚悟した方がいい。リオ五輪3000m障害に出場した塩尻和也(順大)、17年ユニバーシアードのハーフマラソンで金メダルに輝いた片西景(駒大)など、学生長距離界を代表する選手たちも出場する。留学生を相手にどんな走りを見せるのか、非常に楽しみだ。 上位陣の走りに目を奪われがちだが、先述した通り、箱根駅伝の予選会は上位選手よりも下位選手の出来がカギを握ることが多い。今回は距離が延びたことで、ペース設定を読み違えると、従来以上に大きく崩れることになる。ラスト1.0975kmの大逆転は起きるのか。指揮官たちの“判断”が明暗をわけることになりそうだ。 (文責・酒井政人/スポーツライター)