絵本作家・鈴木のりたけが語る「子どもに何より良い影響を与えること」とは? 『大ピンチずかん』の楽しみ方も
「自分のやりたいことをやる」で絵本作家に
――鈴木さんはどうして絵本作家になったのでしょうか。 僕は、最初から絵本作家になろうと思っていたわけではないのです。大学を卒業してJR東海に入ったものの、2年ほどで退社して、広告デザインプロダクションでグラフィックデザイナーをやっていました。とはいえ広告は多くの人が携わっているので、なかなか自分の思い通りにはいきません。自分の名前が残る、最終成果物があるような仕事をしないと一生後悔するなと思って、絵を描き始めていろいろな人に見てもらっていました。 そのうちに、絵本の原稿を募集するコンペで受賞して本になったのが、『ケチャップマン』という作品です。短期間ですが書店に置いてもらい、その本を見た出版社から声をかけてもらったことがいまにつながっています。 特にデザインをやっている友だちは、みんな自分の仕事場のブースを好きなもので飾り付けています。音楽が好きな人の机にはライブのチラシがたくさん貼ってあったり、好きな女優さんのフィギュアが置いてあったり。その机を見るだけで、その人の性格や志向がよくわかっておもしろいなと思っていました。 「しごとば」シリーズも、どういう本を作りたいですかと編集者に言われて、そういったそれぞれの「しごとば」を並列して見せて、その人の人間性をあぶり出すような企画ができたらおもしろいですよねと話したことから生まれたシリーズです。 それも、「自分のやりたいことをやる」というのがまずあってのこと。子どもたちにもちゃんとわかるように、表現は気を付けていく必要はありますが、自分が本当におもしろいと思っているものを、子どもにも大人にもわかりやすく絵で伝えることを考えていたら絵本になっていたという感じがします。 ――「しごとば」には個性がでるというお話でしたが、ご自身のアトリエで個性が出ているのはどのようなところですか? 僕は、ごちゃっといろんな物をそのまま置いておきたいタイプです。自分の頭の中もそうですが、並列してたくさんのものがあって、いつ、何が前面に出てくるか、ビビッとくるかわからないので、それを全部保留しておきたいんです。 このしごとばも、目に見えるところに並べておきたいという自分の頭の中の状態がビジュアル化されていますね。「これは絵本に使えそう」と集めておくというよりは、なんかいいな、触っていたいなと思える物に囲まれていると、想像力のガソリンになるというか、楽しい気持ちの焚きつけになる感じがします。