英首相がマスク氏の「うそ」に反論、児童性的虐待事件めぐり 各国指導者も内政干渉に困惑
ロンドン(CNN) 英国のスターマー首相は6日、同国で児童への性的虐待を行った集団に関する「うそや誤情報を広めている」人々を批判した。米実業家イーロン・マスク氏が巻き起こしたネット上の騒動に応えた形だ。 【画像】米実業家イーロン・マスク氏=2024年12月、米首都ワシントン スターマー氏は記者団に対し、「うそや誤情報を可能な限り広く広めている人々は、被害者に興味があるのではなく、自分自身に興味があるのだ」と語った。 X(旧ツイッター)を所有するマスク氏は、同プラットフォームを利用して数日間にわたり、イングランドの一部で過去に長年続いた児童性的虐待を蒸し返した。 マスク氏はXでフィリップス政務次官の収監を求め、同氏を「邪悪な生き物」などとののしった。スターマー氏についても収監されるべきだと投稿している。 スターマー氏は「威嚇や暴力の脅しをあおり、メディアがそれを増幅することを期待するというこうした手法をこれまでに何度も見てきた」とし、「極右の弊害がフィリップス氏や他の人たちに深刻な脅威をもたらす場合、私の考えでは一線を越えたことになる」と述べた。 マスク氏は、スターマー氏が検察局長時代に性的虐待を行った集団を阻止できなかったことで「英国のレイプに共謀した」と非難した。スターマー氏は6日、検察局長としての自身の実績を断固として擁護。被害者の声が届かなかった「アプローチ全体」を変え、「児童性的虐待事件の起訴件数が過去最多」だったと反論した。 2014年の報告書によると、1997年から2013年の間にイングランド北部の町ロザラムでは約1400人の児童が性的虐待を受けていた。極右勢力は長い間この事件を利用しており、加害者集団の大半が南アジア系であると指摘している。 米国でトランプ次期大統領の再選を助けることに成功したマスク氏は、他国の政治的な発言への介入を強めている。 ドイツで2月に予定されている総選挙を前にマスク氏は先月、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の支持を表明した。マスク氏はSNSへの一連の投稿に加え、ドイツの大手新聞に週末の論説記事を寄稿し、AfDへの支持を説明した。同党はナチス時代のイデオロギーとスローガンを復活させたとして非難されている。 ドイツ政府はマスク氏が選挙に「影響を与えようとしている」と批判している。 マスク氏はまた、前回の選挙からわずか6カ月にもかかわらず、英国での再選挙を強く求めている。同氏はポピュリスト政党「リフォームUK」を支持しているが、6日には同党党首のナイジェル・ファラージ氏に指導者の「資質がない」として辞任を求めた。 他の欧州指導者たちも、マスク氏による他国の内政干渉に困惑を強めている。ノルウェーのストーレ首相は6日、懸念を表明した。 フランスのマクロン大統領もマスク氏の行動に不信感をあらわにしている。 マクロン氏は6日、パリで、フランスの大使らに対し、「最大のソーシャルメディアネットワークの所有者が国際的な反動運動を支持し、ドイツを含む選挙に直接介入すると言われたら、誰が信じただろうか。これが我々が住んでいる世界であり、外交を行わなければならない世界だ」と語った。