戸田市「AIで不登校予測」、9割が「信頼性高い」 「ダッシュボード」連携で教育データ活用を推進
リスク予測により、状況が悪化する前に組織で対応できる
教育総合データベースを整備していくうえで、1人1台端末から取得した心身の状態のデータやアンケートで得た回答などさまざまな個人情報を扱っているが、子どもや保護者からはどのように同意を得たのだろうか。 「基本的には、各種調査などで子どもからデータを取得する際や、ダッシュボード連携に当たっての保護者宛ての通知において、教育総合データベース利活用の目的を明示するなど丁寧な説明に努めています。もし個人情報削除の希望があれば、データを除外できるようにしていますが、そうした方はごくわずかでした」 また、出欠情報や保健室の利用状況などのデータは校務支援システムから、福祉部局のデータは市役所内のネットワークを通じて取得しているという。「国の実証事業ガイドラインも踏まえ、個人情報保護法(法第69条第2項第2号又は第3号)に基づく目的外利用や外部提供の手続きを経たうえで、必要なデータを取得しました」と秋葉氏は説明する。 実際、現場ではどのような成果が生まれているのか。秋葉氏は、まず不登校リスクに対して組織で対応できる体制が整えられた点を挙げる。 「これまでは、気になる児童生徒の状況が悪化してから管理職に報告するというケースがありました。しかし、今は担任だけでなく管理職も同時にデータで状況を確認できるため、リスクの高い児童生徒がいた場合に学校として迅速に対応できます。とくに小学校の先生は忙しいので、管理職側から声をかけることで、状況が悪化する前にアプローチできるようになったという声をいただいています」
目下の課題は「タイムリーなデータ連携」
一方で、課題もある。市内に限定した取り組みのため、不登校予測の精度を上げていくにはサンプル数が少ないという。また、タイムリーなデータ連携もできていない。 「小学校と中学校でそれぞれモデルをつくりましたが、いずれも毎年4月~10月末時点で取得可能なデータを基に、11月以降の不登校リスクを予測するものになっています。現状、データ更新は手動で作業負荷も大きく、『昨日までの出欠情報』などタイムリーなデータを反映したモデルにはなっていません。本市では、子どもたちの支援策を検討するケース会議が小学校で月1回、中学校で週1回行われていますが、現場からも『せめてその頻度に合わせてデータ更新をしてもらえると、支援策を検討しやすい』という意見が多く寄せられており、データ連携の自動化は今後の課題です」(秋葉氏) また、予測モデルの精度を高めていくためには、日々の出欠状況のような、更新頻度の高いデータを多く集めていく必要もあるという。同市では2022年度末から、小学校の校内サポートルーム「ぱれっとルーム」のモデル校に指定された3校において、「シャボテン(心の天気)」というアプリを使い、児童に1人1台端末から心や体の調子を4段階で毎日入力してもらっている。このほか、中学校1校でも、「きもちメーター」という健康観察アプリを活用している。 「心身の調子が悪くなるときが支援のタイミングだと言われていますので、このような毎日の心身に関するデータ収集を拡大して精度を高めていくことは重要になります。また現場から、『リスク判定の根拠がわかりにくい』といったご指摘もあり、例えば『欠席が何日続いたら危険』といったようなシンプルなロジックによるアラートも必要かもしれません。実証事業は、今年3月までで終了しましたが、引き続き市の事業として取り組み、精度を上げたいと考えています」(秋葉氏)