極端な思考、ミスへの恐怖...若者が抱える“職場の困難”のリアル
「ほとんど」「みんな」「かならず」と言った言葉で決めつけがち
大阪府豊中市の服部天神駅から徒歩で15分ほどのところに、青少年交流文化館いぶきがある。若者たちの居場所として作られた建物だ。この3階に一般社団法人「キャリアブリッジ」のオフィスが入っている。 同法人は現在26人のスタッフを抱え、生活困窮者支援、ひきこもり支援などを手掛けており、代表的な事業の一つとして地域若者サポートステーション(以下、「サポステ」)を運営している。 地域若者サポートステーションとは、厚労省が主体となって若者の一般就労を支援し、自立へつなげるための事業だ。全国に177カ所あり、同法人は大阪府内のサポステの一つを委託されて行っているのだ。代表理事の白砂明子氏は言う。 「うちのサポステに来る相談者はネット検索で見つけてくる人もいますが、ハローワークから紹介されてくる人もいます。ハローワークの担当者が相談に乗っている中で、この人は今のままのコミュニケーション能力や社会経験では就業が困難かなと感じた場合は、サポステを紹介することがあるんです。それでうちにやってきてプログラムを受けていただく方も多いです」 サポステは、障害者の就労支援の事業所とは異なり、あくまで一般就労につなげるための事業だ。そのため、何度か会社で働いてみたけど、そこでうまくいかずに辞めてしまったとか、10年以上にわたって転職と再就職をくり返しているとか、長年ニート状態だったといった人たちが対象となる。白砂氏はつづける。 「相談者の多くが、前職を辞めた理由として"人間関係"を挙げます。上司や同僚とうまくいかなかったとか、理解してもらえなかったといったことです。ただ、じっくりと聞いてみると、相談者の方に相手の話を理解する力や、自己表現をする力が充分でないためにそうなっているのではないかと感じることもしばしばあります。 指示されたことを守るとか、同僚と信頼関係を作るとか、相手の立場に立って先回りした対応をするといった想像力や先読みする力が身についていない方が多いように思います」 サポステでは、相談者との面談の際に、専門知識を持ったスタッフが前職を辞めた理由や、これまで就職活動をしてこなかった理由を尋ねることがある。この時、相談者の中には「会社がブラック企業だった」「パワハラ上司だった」「職場にはいじめがあるから」などと答える人が少なくない。 スタッフはその言葉を鵜呑みにするのではなく、もう少し踏み込んで事情を確かめてみる。すると、次のような回答をする人が一定数いるという。 「今はほとんどの会社がブラックじゃないですか」 「上司ってみんなパワハラしますよね」 「職場にはかならずいじめってありますから」 根拠もないのに、「ほとんど」「みんな」「かならず」と言った言葉で決めつけてしまうのだ。なぜ、そうした思考になるのだろう。