「自分たちの都合で考えるな」…成果を出せず仕事中に車で昼寝をしていた「ダメ営業マン」に上司が授けた営業の「極意」
上司に詰められる昼下がり
「最近はちょっと、厳しいです……」 少し躊躇しながら曖昧な返事で応えます。 「いま、どんなところを回っているんだ」 さらに踏み込んできます。 「レストランとか喫茶店とかそういったところです」 やっていることをそのまま答えます。 「新規開拓といっても毎日行くのはきついだろう。ましてや限られた市場だ。そんなに都合のいい訪問先がそうそうある訳じゃない。そうじゃなかったらこの時間にここにいることもないだろう」 「ええ、まぁ……」 いきなり核心を突かれて言葉がありません。忙しそうに働いているオフィス勤務の同僚たちがチラチラとこちらを見ています。昼過ぎのこの時間に自分の机で急ぎでもない書類をつくって時をやり過ごしている自分がなんとも情けなくなりました。
いままでの延長線上で考えない
「ちょっと教えて欲しいんじゃが、お前は何を考えて新規の取引先を探しているんだ」 やれやれ説教か。この状況で辛いなと思いながらも黙って話を聞くしかありません。 押し黙っている私に「お前はまずレストランや喫茶店に自分たちの製品を買ってもらいたい、機材を置いてもらいたいと考えているんじゃないか」との質問が飛んできます。 確かにその通りです。それがいまの仕事なので、「はい、それは、そうです……」と力ない返事をします。 「もしそう考えているんだったら順番が違うぞ。それはこちらの都合で考えているということじゃ。商品を買ってくれる、機材を置いてくれることが先じゃなくて、我々の商品が欲しい、あったら嬉しい、我々の機材を置いたら便利になる。そういうところはどこか。まず相手の都合から考えるということだ。営業はその順番に気を付けること。ひょっとしたらレストランや喫茶店じゃないのかもしれん。新規開拓はいままでの延長線上でものを考えないことだ」 それはその通りと思いつつ、こちらの商品を求めているところ、そこまでいかなくてもあったら嬉しいところってどこだろう。顎に手を当て考えながら部長の顔を見上げますが、答えは見つかりません。 小林部長はそれだけ言うとさっさとどこかに行ってしまいました。私はなんだか答えが見つからない宿題をもらった気分でした。
山岡 彰彦(株式会社アクセルレイト21 代表取締役社長)