「前時代的? な気合とド根性が現代のMotoGPをさらなる高次元へ」【ノブ青木の上毛グランプリ新聞 Vol.19】
その後、3番手になったのはドゥカティ・ファクトリーのエネア・バスティアニーニだったが、ふたりとの差はどんどん離れていく。チェッカーを受けた時には、2位マルティンの6秒以上後方、優勝したバニャイアからは約9秒も引き離されていたのだ。 これは本当に凄まじい。なぜかって、バニャイアとマルティンは序盤にバッチバチのバトルを繰り広げていたからだ。皆さんもご覧になったことがあると思うが、通常、バトルになるとラップタイムは落ちる。普段とは違うラインを通るし、後ろを気にしながら駆け引きのライディングになるので、それも当然だ。 しかしバニャイアとマルティンは凄まじいバトルを見せながら、どんどん後続を引き離していったのだ。「そんなことがあり得るのか!?」ワタシは心底驚いた。そしてバニャイアとマルティンのふたりが、気合いとド根性で完全に別次元にいることがよく分かった。
チャンピオンシップを優先して戦っているマルティン
正直言って、ふたりともなぜ速いのかが分かりにくいタイプだ。バニャイアは乗車位置が優れているし、タイヤマネージメントもうまい。マルティンはベタ寝かせでコーナリングスピードが速い。だが、例えばペドロ・アコスタのブレーキングのように、ものすごく際立った何かがあるわけじゃない。 それでも、今年のチャンピオンシップを争っているのは、バニャイアとマルティンだ。それにふさわしい気合いとド根性を見せてくれている(笑)。何よりも感動してしまうのが、気合いとド根性が空回りせず、キッチリと走りに表れ、MotoGPのレベルをガーンと引き上げていることだ。 マレーシアGP決勝で優勝したバニャイアのレースタイムは、去年優勝したバスティアニーニより5秒近くも速かった。開発の手を緩めないドゥカティもスゴイと思うが、やっぱりライダーの頑張りが利いているのだとワタシは思う。 最終戦が行われる予定だったバレンシアが大水害に見舞われ、大変なことになっている。ワタシが現役時代に何度も通った道路が寸断されている様子を見て、心が痛む。 現時点でドルナは、カタルニアサーキットでの最終戦開催をアナウンスしている。これに関しては、さまざまな意見や考え方があると思う。ワタシとしては、ここまで19戦にわたって本当に素晴らしいチャンピオン争いを繰り広げてきたバニャイアとマルティンが、しっかりと最終戦で決着できることを素直に喜びたい。 1か月前なら、バニャイアの3連覇がイメージできた。しかしここまでくると、もうさすがにマルティンの初戴冠が見えている。雨が得意ではないマルティンが、レインコンディションの第18戦タイGPで2位になった。優勝したバニャイアの約3秒遅れだ。マレーシアGPでも、バニャイアを深追いせずに2位に甘んじた。 ──タイGPでも無理をしなかったマルティン。