【報知映画賞】「ルックバック」作品賞・アニメ部門 押山清高監督「短編はお客さんが満足する形で仕上げる難しさ」
今年度の映画賞レースの幕開けとなる「第49回報知映画賞」の各賞が25日、発表された。作品賞・アニメ部門には「ルックバック」(押山清高監督)が輝いた。 【画像】「報知映画賞」受賞者一覧! * * * 声のトーンこそ変わらないが、押山監督のにこやかな表情が、喜びを示していた。「こういう賞をいただいて目に見える形で評価していただけるのは単純にうれしい」。興行収入は海外と合わせて40億円を突破。11月から世界配信された「Prime Video」では、日本以外でも大きな広がりを見せているが「ただただ、運が良かったと言い続けているんです…」と謙遜した。 大人気漫画「チェンソーマン」(集英社)などで知られる藤本タツキ氏の同名漫画が原作。小学生の藤野と不登校の同級生・京本という2人の少女が、漫画を描くことでつながっていく。映画化にあたって自らも原画に携わり「映画を作っているのがまさに絵描きである私たち。藤野と同じように努力しながら作り続けているからこそ、物語で描いている部分とシンクロして作品に閉じ込められた」と実体験が生かされた。 上映時間は58分と通常の映画より短め。長編と短編、それぞれに一長一短があるとした上で「短編はお客さんが満足する形で仕上げるところに難しさがある」と分析する。「この作品はセリフが少ないので、コンパクトにできるかと思いきや、物語の深さを考えるとお客さんに伝わらない形で終わってしまいかねないと感じていました」。あくまでも、作品のクオリティーを最優先し、時間以上に濃い内容を詰め込むことを意識した。 実は、漫画原作の映像化はこれが初挑戦。「最初からこんなに良い形でできたのは、成功の道筋になったと思います」と手応えを口にする。「同じことを繰り返すのが苦手なタイプなので、できれば作品ごとに違うやり方を繰り返していきたいなと。自分たちが面白く作れば、見てくれる人にも面白く伝わる可能性がある」。飽くなき探求心を胸に、これからも自分にしか生み出せない作品を手がけていく。(松下 大樹) ◆ルックバック 2021年に「少年ジャンプ+」に掲載された藤本タツキ氏の長編読み切り漫画が原作。小学生の藤野(声・河合優実)と不登校の同級生・京本(吉田美月喜)は漫画を描くことで親しくなるが、成長した2人に全てを打ち砕く出来事が起こる。 ◆押山 清高(おしやま・きよたか)1982年1月3日、福島県出身。42歳。2007年、NHKアニメ「電脳コイル」で初の作画監督。16年、TOKYO MXアニメ「フリップフラッパーズ」で初監督。17年、自身のスタジオである株式会社ドリアンを設立した。 ▼作品賞・アニメ部門 選考経過 「窓ぎわのトットちゃん」「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」を推す声もあったが、1回目投票で「ルックバック」が多数を集めた。「飛び抜けていい。完成度の高さに驚いた」(松本)、「非常に多角的な原作漫画の構成を忠実に映画化した」(木村) ◆選考委員 荒木久文(映画評論家)、木村直子(読売新聞文化部映画担当)、見城徹(株式会社幻冬舎代表取締役社長)、藤田晋(株式会社サイバーエージェント代表取締役)、松本志のぶ(フリーアナウンサー)、YOU(タレント)、LiLiCo(映画コメンテーター)、渡辺祥子(映画評論家)の各氏(五十音順)と報知新聞映画担当。
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