藤井隆、どん底の自分を救ってくれた東野幸治さんの言葉
東京でお仕事をさせてもらうようになった頃、特に東野さんとのお仕事が多くて、当時は週に2~3回はご一緒していたと思います。 実は、僕がミュージカルや舞台をやることを後押ししてくださったのも、東野さんだったんです。 本番でもそうなんですけど、普段は「ああしろ、こうしろ」ということはおっしゃらない東野さんが、僕が舞台の話をいただいた時に「自分が言うようなことじゃないけど、やってみたらいいんじゃない」と言ってくださったんです。実際に公演が始まって観に来てくださった時も、公演後に食事に連れて行ってもらって「普通と違うことをやるのが、君らしくていいと思う」と言ってくだった。 普段、そういうトーンのことをおっしゃらない東野さんの言葉だけに、そこに後押しを受けて、いろいろな作品にも出してもらうようになりました。そんな中、舞台のスケジュールがどうしても合わず、東野さんも出てらっしゃった番組を途中で抜けて舞台に行くという場面があったんです。スタッフさんも了承してくださっていたので、さも当たり前のことのように「舞台の時間があるので、抜けさせていただきます」とあいさつをして出て行こうとしたんです。すると、東野さんが本番中にもかかわらず「この番組をなんやと思ってんねん」とおっしゃったんです。 僕としたら、その瞬間は「東野さんこそ『舞台を頑張れ』と言ってくださったんじゃなかったのか」と思った部分もあったんですけど、改めて考えると、やっぱり、どこか考えが甘くなっていたんだなと。舞台も、テレビのお仕事も両方ともしっかりやるというのは、生半可なことではない。それは分かってるつもりではあったんですが、僕の中にある“甘さ”みたいなところをズバッと指摘していただいたんだと思うんです。 東野さんにしたら、もちろん、僕のことだけを見ているわけでもなく、普通に、スーッとフラットに見ていて「これは違う」と思うことがあったから、言っただけ。それ以上でも、それ以下でもないと思います。ただ、僕の勝手な考えから言うと、言わなくても東野さんは何も困らない中、ズバッと言ってくださることは、とても有り難いことだなと…。