転覆漁船と船団組んだ運搬船が網切断、探索船も共倒れ防ぎロープ切る…漁船は船首から「垂直に沈んでいった」
茨城県の鹿島港沖で6日未明に大津漁協(北茨城市)所属の巻き網漁船「第8大浜丸」(80トン)が転覆した事故で、周辺海域では、8日も海上保安庁などによる行方不明者3人の捜索が続いた。事故はイワシの捕れすぎが原因で起きたのか――。大浜丸や、周辺で操業していた漁船の乗組員らが取材に応じ、当時の状況について語った。(大垣裕、寺倉岳) 【図解】一目でわかる…転覆事故が起きた時の漁船と運搬船、探索船の位置関係
鹿島海上保安署によると、大浜丸は6日午前2時5分頃、鹿島港から東約30キロの海上で転覆、沈没したとみられる。インドネシア人5人を含む乗組員20人のうち17人が救助されたが、50、60歳代の日本人男性2人が死亡。40、60、70歳代の日本人男性3人が見つかっていない。
大津漁協などによると、大浜丸は5日昼から計3隻で船団を組んでイワシ漁に出た。3隻にはそれぞれ役割があり、探索船が魚群を探し、網船の第8大浜丸は捕獲する網を船体の右側に張って巻き上げる。運搬船は網から魚をすくって漁港に水揚げする。探索船は大浜丸の左側とロープでつなぎ、魚群の重さで右側に引っ張られる大浜丸を支える。夕方以降に1度目の操業を終えており、事故は2度目の操業時に起きた。
当時、周辺海域にはイワシの群れが集まり、他船団の数十隻も操業していた。他船団の乗組員によると、大浜丸は隣の船の網と絡まないよう無線で連絡を取り合って漁を始めた。
関係者によると、運搬船は魚を積み込むために船に網を取り付け、大浜丸とロープでつないで平行の位置で作業するが、今回、大浜丸が傾くと、危険を回避するために運搬船側の網を切り、ロープも外したとみられる。開いた網から魚を逃がそうと試みたが、イワシの群れは大浜丸の下方へ動き続けた可能性があるという。
一方、探索船はロープを全速で引くように指示を受けた。それでも態勢を立て直せず、乗組員らによると、共倒れを防ぐために探索船のロープを乗組員が切ったという。大浜丸は発電機の浸水によって停電し、無線も不通の状態で転覆した。