コシヒカリ一等米1袋8500円 農家への仮渡金前年比3割アップ 「予想以上」と出荷者歓迎/兵庫・丹波市
米需要のひっ迫で、兵庫県丹波市のJA丹波ひかみの「丹波ひかみ米」が完売し、同市内の野菜直売所でもごく品薄が続く中、稲刈りが市内で始まった。今年産米の産地価格に注目が集まる中、同JA(藤原昌和組合長)は理事会で、集荷する際に一時的に支払う仮渡金を8500円(コシヒカリ一等米1袋30キロ)と決めた。昨年産米と比べ、2000円、30%強の大幅アップ。特別栽培米「夢たんば」は8700円(昨年比2000円増)。約1800人が同JAへ出荷予定。出荷する生産者は「予想以上」「期待に届いた」と歓迎している。)
仮渡金は、全農兵庫県本部が示した額を参考に、各JAで決める。同JAは、県本部が示した額より高値とした。仮渡金はバイヤーの買い取り価格や、JAに出荷しない生産者が直売する価格に影響する。 同JAの片山哲郎常務は、「農家が意欲を持って栽培を継続できるように、との思いを込めた額にした」と決定理由を語った。また、米価の先行きについては「県本部は、下がらず維持を見込んでいる。東北の産地が主食用米から飼料用米に切り替えていることなどが理由のようだ」と話す。卸売業者を回り、令和5年産米の在庫がなく、JAに出荷された米を卸売りが欲しがっていると実感したという。 仮渡金は、新型コロナ最中の令和3年産米が底。1袋5600円まで下がり、2年続けて緊急支援対策で300円を上乗せした。 JAに数百袋を出荷する同市青垣町内の生産者は、今年の仮渡金を「1000円ぐらいのアップかなと思っていた。予想以上に上げてくれた」と歓迎。「市場原理で、安く買われてきた。需給バランスで生産者が有利の今年上がらなかったら上がる時がないと思っていた」と喜んだ。
米は、自身に売価の決定権がある消費者への直売が最も利益率が高く、次いで手数料が生じる野菜直売所での販売、バイヤーへの販売・JA出荷、と続く。直売や直売所への販売は、在庫を管理する設備、売れ残るリスク、商品補充など販売管理の労力が必要。JAへの出荷はこれらリスクと手間がない分、引き取り価格が安いと、生産者の不満の種だった。 JA出荷、バイヤーに販売、直売、と3つの販売方法を取る同市氷上町内の生産者は、「期待に届く金額。これなら良い。相場が上がる。どこに売るにしても良い」と喜ぶ。直売は過去からJA価格より高値で販売してきた。「仮渡金増額分の2000円全額を上乗せするのは難しいが、いくらか値上げができる」と言う。「あとは作柄。平年通り取れてくれれば」と、台風10号の被害がないことを祈っている。 自社の一般米コシヒカリ15ヘクタール、水稲20ヘクタールの作業受託をしている丹波たかみ農場(同市市島町)の高見康彦代表は、「米価が適正価格に戻りつつある。この傾向は今後も続く」とみる。理由は、全国的な生産者の減少。他産地米を買っているバイヤーから「今、取引している産地はこの先、高齢化で量が確保できなくなる。新規に取引を始めたい」と商談を持ちかけられている。 同JAの理事でもある高見さんは「今年は良い線の額が出た。JAに出荷するのが一番楽。たくさんの農家が助かる。求められているのは安全で安心なお米。『丹波ひかみ米』は良いと思う」と話していた。 5月に取りまとめた産米出荷契約対策で1袋当たり100円上乗せがある。仮渡金のほか、追加払いなどがあり、精算金が確定する。令和5年産米の精算金は未確定。 同JAが、本店前のとれたて野菜直売所などで小売りする「丹波ひかみ米」の令和6年産米の価格は未決定。 同市の水稲作付面積は約2537ヘクタールで、県内最大。