群馬県知事のアドバイザーは高校生……意見を聴くだけでなく実現する意義と難しさ
■こどもの意見を聴く意義と課題は
群馬県の取り組みでは、お笑い芸人で若者の政治参加を進める出張授業などをしている、たかまつなな氏の「笑下村塾」が高校生のサポート役を務めています。 まず、リバースメンターの意義について、たかまつ氏はこう話します。 「高校生と話すと、選挙権は18歳からで、16歳の自分たちの声は政治に届いていないんじゃないか、社会は大人の人が決めていて、自分たちには変えられないといったことを聞きます。こどもたちの声を社会や政治に届けることが大事だと思っています」 「そもそも、なぜこどもの意見を聴くのかというと、自分の意見を十分聴いてもらう体験や自分の声によって自らの生活や社会に何らかの変化をもたらした経験をすると、自己肯定感や主体性向上につながるし、民主主義の担い手を育てることになると思います。そして、大人は考え方が保守的になりがちで、しがらみがないこどもたちが”これはおかしい”と純粋な声をあげることは、社会にとっても大きな気づきになると思います」 「さらには、高校生の声で何かが変わったことを知ったほかの子も、私もちょっと声をあげてみようというように勇気付けられることにもつながります」
■実現しない理由を伝えることが重要
高校生による提言は実現しないものもありました。政策の実現には、知事だけでなく、県の担当部署、県議会や教育委員会、国、市町村などさまざまな組織が関連しているためです。 たかまつ氏 「高校生にはできる限り、小さいことから大きいことまで書いてみない?とアドバイスしていて、提言の全部が全部とにかく実現されればいいということではないと思っています。ただ、出来ない場合はその理由を大人が様々な背景含めて、(提言した高校生に)しっかり伝えることが大切だと思っていて、今回もちゃんと説明するために文書で伝えました。高校生側から特に大きいリアクションはないですが、県の予算編成の仕組みを知っておきたかったという意見が出たので、今年度は、最初の段階でそれを説明しました」 こども基本法は、国や自治体にこどもの意見を聴くことを義務付けていますが、その意見をすべて通すべきなどとは書かれておらず、こども家庭庁は、反映できない場合、そのプロセスを分かりやすく伝えることが大事と強調しています。 たかまつ氏 「笑下村塾はリバースメンターの”心構え”を作りました。社会は変えられると信じて行動しようということとともに、社会を変えるには時間がかかる。一歩ずつ変えていこう。自分と異なる考えの人の背景を想像し、対話しよう。税金や市民のことも考えて……なども盛り込みました」 「こういうプログラムは、こどもの発表を聴いて、『素晴らしいね』で終わるものも多くて、政策を実現する取り組みは簡単ではないんです。行政もこどもの意見を聴くことに慣れていない。海外の例などをみても、行政とこどもたちの間に入って、意見を反映させるために一緒に考える役割が必要かなと思います」 「昨年度、県庁の方々が実現にむけてすごく調整して下さったんですが、とても手間がかかるので、心折れないで続けてもらうには、こどもの意見を聴くことって大事だねという意識が県庁や住民の中に広がっていけばいいなと願っています」