日本の政治に「経済政策」などというものはない
そもそも、競馬において何が最重要なのか。それは優秀な馬の生産である。これに尽きる。レースはあくまで、生産すべき馬、残す血を探すために行っているのであり、同時に育成も、その才能をあまりなく開花させ、どのような馬を生産していけばよいかということを知るために行われるのである。 具体的には、日本競馬は世界に生産馬を売っていかなければならない。それも、高く売らなくてはいけない。 競馬がすばらしいのは、資本主義の権化のような産業で、高く売れることがその後の血を残すことに直結するからである。高く売れれば、その馬は良いオーナー、良い育成牧場、良いトレーナーに恵まれ、レースでも良いジョッキーがあてがわれ、その結果レースに勝てば、繁殖に上がり、良い配合相手に恵まれ、だから子供も走ることになり、孫もたくさん生まれることになるのである。
毎秋に行われるフランスの国際G1、凱旋門賞を勝つことが重要なのは、欧州のオーナーたちにさらに日本生産馬を高く売るために必要なのである。矢作師がアメリカの競馬を重視し、マルシュロレーヌで2021年にブリーダーズカップディスタフを勝ったのも、欧州偏重の日本の生産界に対して「アメリカ市場でも高く日本生産馬を売らなくてはいけないよ、そして売れるよ、そしてアメリカの生産は合理的でフェアで、世界的な広がりがあるよ」と知らしめたのである。
とにかく、生産がすべてだ。そのために、北海道をさらに強化し、社台グループ以外の生産者も強くし、調教師を強くするために、JRAに守られたJRA調教師という既得権益を柔軟化し、馬房制限を大幅に緩和し、強い日本調教馬を生み出し、世界で勝ち、その子供たちを世界で売ることが必要なのである。 ■愛チャンピオンズステークス出走シンエンペラーに期待 さて、その矢作師が管理するシンエンペラーが9月14日に、アイルランドで行われるアイリッシュチャンピオンズステークス(国際G1、距離2000メートル)に出走する。