<新選組のルーツを訪ねる>歴史物語のなかの新選組「ふるさと歴史館」
後の新選組作品に多大な影響を与えた司馬遼太郎
こうした流れを変えたのが、「新選組血風録」や「燃えよ剣」といった昭和30年代後半に登場した司馬遼太郎の新選組小説。土方は恐れられつつも人間味あるイケメン、沖田はスゴ腕の美青年剣士として、いずれも主役級に扱われる一方、近藤の存在感は従来より低下。これらの小説はドラマ化による相乗効果もあって、人々が持つ新選組のイメージを変え、後に続く新選組作品にも多大な影響を与えた。たとえば、土方や沖田など司馬遼太郎が創作した人物設定を、その後の多くの新選組作品が踏襲している。 松下学芸員は、「司馬遼太郎の小説は、史実のようなリアリティある描写が特徴ですが、場合によっては史実より遠ざかるケースもあります」と指摘する。近藤の道場は無名の田舎道場と小説で描写されるが、実際は、名門ではないが幕府の御家人など数百名が通う規模の道場で、決して無名ではなかったという。『無名だが強い』方がより劇的なので、そうした設定が小説で採用されたとみられる。
少女マンガにも登場した新選組
新選組作品は、少女マンガにも登場する。昭和50年(1975)に発表された「天まであがれ!」(木原としえ作)は、『主人公の少女がわけあって男装して新選組に入り、イケメン隊士と恋をする』という、今日にいたるまで繰り返し採用されるストーリーの原型といえる存在だという。 その後、一時は新選組作品が減った時期もあったが再び増えはじめ、平成16年(2004)の NHK大河ドラマ「新選組!」の放映前後には、マンガなどの新選組作品が多数登場した。なお、「新選組!」では、今年の大河ドラマ「真田丸」で主役を演じる堺雅人が山南敬助役を演じたのを契機に、山南人気が上昇した。その後も、ゲームやアニメも含めて数々の新選組作品が世に送り出され、今にいたっている。 長年の間、新選組というテーマが幾度も創作の題材として使われ、かつ人々をひきつけてきた理由について、松下学芸員は、「日本人の判官びいき、つまり負ける方が好きな気質が働いているのでは」と見る。また、創作者側とすれば、史実の研究が進んでいないので話を作る際の自由度が高いなど、作りやすい題材でもあるという。企画展は、6月12日(日)まで開催される。 同歴史館はけっして大規模な施設ではないが、壬生の新選組屯所があった旧前川邸の図面など、貴重な史料を常設展で多数展示している。JR日野駅から徒歩15分だが、途中の登り坂を避けたい場合は、日野駅発もしくは京王電鉄高幡不動駅発の京王バスの利用がおすすめ。「日野市役所入口」バス停を下車して徒歩4分で到着する。 (取材・文:具志堅浩二)