トランプ政権の温暖化対応を懸念、パリ協定の再離脱で「米国の経済競争力は確実に低下する」UNDP総裁
【バクー=田中洋一郎】国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)に参加している国連開発計画(UNDP)のアヒム・シュタイナー総裁が12日、読売新聞のインタビューに応じた。気候変動対策に否定的なドナルド・トランプ次期米大統領に懸念を示しつつ、温暖化による気象災害に脆弱(ぜいじゃく)な途上国への支援拡充を主張した。
UNDPは、貧困や格差、気候変動といった課題の解決に取り組む国連の主要機関。シュタイナー氏は、トランプ氏が化石燃料重視の姿勢を示していることに触れ、「間違いなく世界の温暖化対策を停滞させる。大きな懸念の一つだ」と述べた。トランプ氏は温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」からの再離脱も言及しており、シュタイナー氏は「世界が再生可能エネルギーを基盤とする経済に移行する中、その流れに逆行すれば、米国の経済競争力は確実に低下する」として、パリ協定にとどまるよう求めた。
COP29では、途上国への資金支援の上積みも主要議題となるが、負担増を渋る先進国と支出増を求める途上国の対立は激化している。シュタイナー氏は「経済・財政上の問題から拠出に後ろ向きになる事情はわかる」と先進国に理解を示しつつ、「温室効果ガスを排出してきた先進国が、途上国の化石燃料からの脱却を手助けすべきだ」として支援の拡充を求めた。
日本については、「多くの途上国にとって力強いパートナーだ」と貢献を評価した。ただ、国内の電源構成は火力が7割を占める一方で、再生エネが2割にとどまるとして、「化石燃料から再生エネへの移行が遅れている」と指摘した。