イタリア海軍の特殊潜水部隊の右手首を解放した、パネライの「レフトハンド」モデルが登場
パネライの腕時計がもともとはイタリア海軍の特殊潜水部隊のためにつくられていたことはよく知られた話だが、その逸話がより際立つモデルがある。それが「ルミノール デストロ オットジョルニ」だ。 【画像】とても珍しい「左利き用」の腕時計 パネライは1960年代、イタリア海軍の潜水士がコンパスや水深計など重要な器具を左手首に装備できるように、レフトハンドモデルを開発。右手首に時計を問題なく着用させることで、潜水士のミッションを支援した。 そんな物語からインスピレーションを得たこの腕時計は、パネライの機能性へのこだわりを反映。ミッションに必要な実用性や精度と、現代の時計製造のエレガンスを融合させてつくられている。 たとえば、素早くリューズを押し込むことができ、ダイビング時の水の侵入を防ぐとともに機密性をも高めるレバーロック式リューズプロテクターは、左手でも操作できる革新的な設計であり、ブランドの伝統を象徴する。一方で、ケースサイズはオリジナルの47mmよりも日常で使いやすい44mmを採用。ムーブメントは8日間のパワーリザーブを備えた手巻きの「P.5000キャリバー」を搭載する。これはイタリア海軍特殊潜水部隊が使用していた当時の「アンジェリュス キャリバー SF240」にインスパイアされたものだ。 シースルーケースバックから鑑賞できるムーブメントは、上下逆向きにセットされ、リュウズプロテクターも左右反転して9時位置に配されている。ダイヤルは2枚のプレートを重ね合わせて作られたサンドイッチダイヤルで、これにより海中をはじめ、いかなる照明環境下でも優れた視認性を実現した。 「ルミノール デストロ オットジョルニ」は、決して左利き専用の時計というわけではない。イタリア海軍の特殊潜水部隊に自分をなぞらえて日常を過ごす、そんな遊び心まで身に纏える特別な一本なのである。
文:石川博也